スティグマを持つ者が他者からそうではないと見なされることをパッシングという。スティグマを持つか否かを他者は知らないがスティグマを持つ者の比率は知っているという社会的相互行為状況をゲーム理論で定式化し、均衡概念を用いてパッシングが成功する条件を検討した。その条件として特にスティグマを持たないタイプの者がとる行為が重要であることを明らかにした。さらにこの結果を、素性を知る者との相互行為における「カバリング」や、シグナリングゲームにおける「なりすまし」と比較考察するとともに、手記や事例研究報告などに見られる事例と照合することで考察の妥当性を検討した。
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