研究課題/領域番号 |
17K18578
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中山 幹康 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (10217945)
|
研究分担者 |
佐々木 大輔 東北大学, 災害科学国際研究所, 助教 (30784889)
|
研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
|
キーワード | 電力 / 貿易 / 内政 / 外交 |
研究実績の概要 |
世界の幾つかの地域では国家間での電力の貿易が計画されている。しかし、計画の多くは実現の見通しが立っておらず、一般には関係国間の外交上の問題が障壁であると解釈されている。個々の計画を精査すると、当該国間の「外交」上の問題よりも、国内の「内政」上の問題が,電力貿易実現への主な障害である場合が多い。関係国間の「外交」ではなく、電力を輸出する国あるいは輸入する国における「内政」上の問題が、電力の貿易が実現することを妨げていることを明らかにすることが、本研究の目的である。 太平洋での事例については、電力を「輸入(購入)」する立場であるオアフ島(米国、ハワイ州)での事情に関して、同島での電力事情に精通している有識者(ハワイ大学の研究者、元ハワイ州政府の高級官僚、ワシントンDCにて在住の研究者などから聞き取りを行うと共に、島嶼国での参照事例として、島嶼国での聞き取り調査に加えて、再生可能エネルギー開発についてハワイ州との協定を有している沖縄県・久米島にある海洋温度差発電実証試験設備での聞き取りを実施した。ハワイ州内で電力の交易が実現しない所以については、電力を「輸出(売却)」する立場であるマウイ島で行われた、再生可能エネルギー反対派による公開討論の記録動画を文字化し、反対の論拠をテキストマイニング(感情分析)により明らかにした。 南アジアでの実情については、国際援助機関であるアジア開発銀行において同地域のエネルギー問題を掌握している専門家からの聞き取りを日本とフィリピン(マニラ)で行った結果、ネパールに於ける地形的な条件と、水力発電所を建設する際の諸コストの高さが、同国での水力発電による国家間の電力貿易実現を妨げていることを明らかにした。 加えて,湾岸地域(中東)および東アジアでの電力貿易が推進されない理由について、これらの地域で事情に詳しい実務者と研究者からの聞き取りを行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
南アジアでの事例については、研究代表者および分担者による共著論文を公刊した。この論文には、アジア開発銀行で同地域のエネルギー問題を掌握している専門家も共著者として参加した。 タジキスタンが建築中の大規模な水力発電所が稼働した暁に想定される、中央アジアの諸国間における電力貿易の可能性に関する、研究代表者および分担者による共著論文を投稿した(査読中)。 また、米国・ハワイ州に属する島の間で想定されている電力交易に関する、研究代表者および分担者による共著論文が殆ど完成しており、近く投稿する予定である。更に、ロシアから日本への電力貿易の可能性は1980年代から提唱されているものの、現在に至るまで実現していない。その理由に関する分析を研究代表者および分担者による共著論文として近く投稿する予定である。 未だ論文としての投稿あるいは投稿準備が完了していない中東および太平洋島嶼国の事例については、2019年度中の投稿を予定している。 このように、本研究はほぼ当初の研究計画に沿う形で順調に進捗している。
|
今後の研究の推進方策 |
2019年度中の投稿を予定している中東および太平洋島嶼国の事例については、更に現地に赴き関係者からの聞き取り調査を行い、論文としての完成度を上げるように努める。 これまでに手掛けた事例について、個別の事例に関する論文として投稿することに加えて、事例を横断する形で知見の一般化を試み、事例からの知見を統合化した論文としての投稿を目指す。 更に,本研究からの知見を取り纏めて国際学会で発表するべく、国際学会に要旨を投稿する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
アラブ首長国連邦での聞き取り調査が、相手先の都合により2019年度に延期されたこと、および、学術雑誌への掲載料の支払いが2019年度にずれ込んだことから、次年度使用が生じた。 アラブ首長国連邦での聞き取り調査、および、学術雑誌への掲載料支払いを2019年度前半に実施することで、本研究の実施に影響を及ぼすことを回避できる。
|