研究課題
本研究の目的は、学問領域横断的な研究体制により、要介護期の居住場所・介護サービスに関する意思形成プロセスを可視化し、テーマ型コミュニティによる要介護期の居住場所・介護サービスに関する意思形成モデルを構築することである。1年目となる平成29年度は、要介護期の居住場所・介護サービスに関する意思形成プロセスについて、国内外の先行研究・事例を収集・類型化し、研究フィールドや質問項目の選定を含むインタビュー調査を実施した。調査は、a)介護サービスを利用する高齢者・家族・ケアマネジャーの3者、b)地域包括支援センター、c)自治会等の地縁組織といったアクターに対して、インタビューを実施した。その結果、現在の意思形成プロセスで不足している要素として、今後、都市部で急増することが予測されている独居世帯も考慮することとした。それは、要介護期でも生活支援が他の支援と一体的支援となるよう、意思形成プロセスに補完する要素として整理することであった。2年目となる平成30年度は、独居の高齢者が住み慣れた地域で暮らし続けることができるよう、要介護期にある高齢者の生活支援ニーズの把握と、生活支援が調整されるプロセスの可視化を試みた。そのため、都市部で定期巡回型の介護サービスを利用する高齢者10名の介護居宅サービス計画書・経過記録・生活支援アセスメントなどの介護と生活支援に関する記録を収集した。収集した記録から、要介護期の高齢者への支援経過に基づいた生活支援ニーズについて、介護サービス事業者の従事者や管理者6名にフォーカス・グループ・インタビューを実施し、意見を聴取した。引き続き、要介護高齢者へのインタビュー、事例記録の収集の追加、専門家フォーカス・グループ・インタビュー等の実施を通じて、要介護期の居住場所・介護サービスの意思形成プロセスを解明し、テーマ型コミュニティによる意思形成モデルを構築する。
3: やや遅れている
2年目となる平成30年度に、要介護期にある高齢者の生活支援ニーズの把握と、生活支援が調整されるプロセスの可視化のため、都市部で定期巡回型の介護サービスを利用する高齢者10名の介護居宅サービス計画書・経過記録・生活支援アセスメントなどの介護と生活支援に関する記録を収集した。しかし、現在の要介護期の居住場所・介護サービスに関する意思形成プロセスに不足している要素を抽出するためには、事例数が少ない。その主な理由として、定期巡回型の介護サービスを利用し、生活支援サービスも受けている要介護期の高齢者という条件に当てはまる対象候補が少ないことがわかった。よって、類似例となるよう条件は緩和して、事例の収集の追加を試みるなど、計画を修正し、研究を遂行している。
現在、要介護期の居住場所・介護サービスに関する意思形成プロセスで不足している要素として、要介護期の高齢者への生活支援に関する要素を抽出している。今後、これらの要素も含めて、テーマ型コミュニティによる意志形成モデルに補完できる要素を整理し、そのモデルを構築する。構築したモデルは、要介護高齢者へのインタビュー、事例の追加、専門家フォーカス・グループ・インタビュー等を通じて、モデルの有効性を検証することが必要となると考える。
2年目となる平成30年度の経費の多くは、調査結果の報告のための国際学会での発表にかかる旅費、介護や生活支援に関する記録の収集とデータ整理、インタビュー調査の準備や実施のための現地への旅費や謝礼であった。しかし、記録の収集に時間を要したため、引き続き記録の収集を追加し、要介護高齢者へのインタビュー、専門家フォーカス・グループ・インタビュー等の実施、国内外での学会参加への使用を計画している。
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