研究課題
本研究では、精子提供によって妊娠出産し子育てをする、女性カップルを対象として国内および海外で調査を行い、彼女たちの抱える葛藤や困難を明らかにするとともに、彼女たちの作る家族の豊かさや可能性を探り出すことを目的とした。コロナ禍のために調査が中断し、研究期間の延長をしたが、コロナ禍の終息が見通せないことから、2020年度後半からここまでの調査結果を最大活用しメール等による補充調査を行って研究成果のまとめとして、共同研究者3名の共著による著書の出版刊行準備を始めることとし、企画構成、第一稿の作成に入った。2021年度は引き続き共同研究者間での討議を繰り返し、最終稿の完成に至り、10月に『女性たちで子を産み育てるということ: 精子提供による家族づくり』(白澤社)として刊行した。同書の構成内容は、序 同性カップルが子を産み育てるということ、それぞれの家族たち:日本での調査から、II 海外からの知見と示唆 【カトリック国】 フランス、イタリア、アイルランド 【東アジア】台湾、韓国、III 女性たちだけでの子育てを考える:彼女たちが示唆する「家族」の可能性、IV【理論編】女性同士の家族を通してみる「家族」とケア、Vまとめに替えて:今後必要な制度の整備について提言、というものであり、性的指向にかかわらず、夫や特定の男性パートナーなしで家族をつくりたいという女性たちがその願いを叶えること、またこうした女性カップルがつくる家族が不利益をこうむることなく暮らせる社会となる道筋を示した。同書は、男女対の夫婦と子どもという「普通」の家族だけではない、オルタナティブ家族への展望をひらき、国際的な研究知見を踏まえて理論的な議論を加えた、家族社会学・フェミニズム理論・ジェンダー論の成果としても重要なものとなった。
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Korean Journal of Gender and Law
巻: Vol.13.No.1 ページ: 63-88