研究実績の概要 |
本研究では過疎地域・非過疎地域間における医療・介護費用の違いについて明らかにし、 その違いの要因を明らかにすることを目的とする。 2019年度は、2018年度までに作成したデータセットを用いて、過疎地域・非過疎地域間において医療・介護費用を比較検討した。さらに、先行文献の報告と、今回の基礎集計を行った結果から、医療費に影響を与える要因として、医療機関の受療状況、処方される薬剤に着目して分析を行った。 本研究では、医療費に加え介護費用の分析も行うため、75歳以上の高齢者を対象とし、そのうち調剤レセプトにて対象期間内に調剤歴がある者(過疎地域1703人、非過疎地域2760人)を分析対象とした。分析の対象期間は2016年1月から2016年3月の3カ月間とした。一人あたり医療費の平均については、外来医療費において、過疎地域の方が非過疎地域より有意に高額であった(過疎地域130,726±121,130、非過疎地域102,454±164,885、p=0.000)。受診する医療機関数が多ければ、医療費は高額となるが、本研究では過疎地域・非過疎地域間に医療機関数の有意差を認めず、調剤された薬局数に有意差を認めた(過疎地域1.27±0.54、非過疎地域1.17±0.41、p=0.000)。これは、過疎地域には医療機関が少ないため、遠方の医療機関に通院していることを反映しているものと考えられた。一方、対象者のうち、介護サービスを利用していたのは過疎地域354人、非過疎地域629人であり、介護費用は非過疎地域の方が過疎地域より有意に高額であった(非過疎地域401,368±288,265、過疎地域321,471±256,413、p=0.000)。これは、介護サービスを利用しつつ在宅療養を行っている対象者では、過疎地域には利用可能な介護サービスが不足していることが要因と考えられた。
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