本研究課題では、社会的ジレンマ状況において、人々が協力し合うためのメカニズムを、理論的・経験的に解明することである。より具体的には、現代社会のような人々の関係が多様で流動的な状況において、いかにして協力的な社会規範が出現し、維持されるのかを数理モデルと実験を通じて解明することが目的である。 上記の目的に沿って、本年度は社会規範のさまざまな側面を分析するための数理モデルを構築した。まず大林が、社会学理論において社会規範の論じられ方や近年の数理モデルの動向をレビューした。次に、吉良と大林がそれぞれ、社会規範の内面化と人が入れ替わる流動的な集団における協力的社会規範の維持に関する数理モデルを構築し、論文化した。これらを応用し、人々が入れ替わる流動的な集団において、集団内での役割期待に関する規範がどのように形成され、維持されていくのかを分析するための数理モデルの作成を準備した。 また、上記の新しい役割期待形成過程について実験を行なって経験的知見を導入することを計画した。このための実験システムを構築している段階であったが、研究代表者の突然の逝去により、システムは完成しなかった。
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