ノルウェーでの比較的高齢の祖父母の調査は日本の感染状況に鑑みて2022年度も叶わなかったが、コロナ禍による当該研究課題の延長によって、日本側については高校生活をコロナ禍のもとで経験した若年層の回顧的調査が可能となり、成長した孫と祖父母についての本研究課題にとって示唆的な知見が得られた。 コロナ禍での祖父母との関係の変化については、a)変化なし、b)変化あり/なしの両方、c)変化ありの3つのパターンが見られた。興味深かったのは、これら3つのパターンが、必ずしも同居・近居・別居という居住条件のみに規定されるわけではない可能性が示唆されたことである。祖父母の年齢にも影響は受けるが、高校生という孫側の年齢段階では、祖父母ー孫関係に関する孫の自発的な選択とコミュニケーション手段の変化によって、地理的近接性の規定を超えた関係形成が行われているということである。 本研究課題全体の成果としては、成長した孫と祖父母の関係に社会的制度が及ぼす影響という点で次のような知見が得られたことである。すなわち、祖父母が子育て支援のエージェントとなる場合でも、成長した孫の当該関係へのコミットメントという点からも、祖父母の地位を占める個人の生活全般を孫との関係に投入してしまわないような関係性が社会的・文化的な正当性を有することが、孫の小さな時期に集中して「過剰消費される祖父母」を防ぐ必要条件であることが浮かび上がった(十分条件ではないにしろ)。そうした社会的正当性は高度な公的育児支援制度がある国だけで可能であるわけではなく、近代社会の典型的なジェンダー規範が労働政策によって結果的に変化したオランダのように、そのような社会的・文化的正当性が、何らかの社会的対応によって「意図せざる結果」としてでも生じるかどうかの検討が今後の課題として得られた。
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