研究課題/領域番号 |
17K18585
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研究機関 | 県立広島大学 |
研究代表者 |
澤田 千恵 県立広島大学, 保健福祉学部(三原キャンパス), 准教授 (20336910)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2021-03-31
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キーワード | エンパワーメント / アドボカシー / 専門職 / 精神科多剤大量処方 |
研究実績の概要 |
今年度は、まず、得られたデータを分析する方法について検討した。検討の結果、質的データ分析の手法「SCAT(Steps for Coding and Theorization)」を用いて行うことにした。SCATを採用した理由は、たんなるカテゴリー分析ではなく、インタビュー参加者それぞれの語りが持つ「深層の意味」について、掘り下げて捉えることが可能になると考えたからである。 SCATを用いて、就労支援事業所の管理者とサービス管理者2名に行ったインタビュー・データの分析を行ったところ、データを満遍なく(偏りなく)分析することができた。分析者にとって関心を引く語りの部分だけを抽出していくのでなく、データ全部を分析して「脱文脈化」と「再文脈化」の2つの作業を行うことで、語りの深い意味を捉えることができると分かった。 分析を行ったデータを考察して、論文として公表することもできた。概要は以下のとおりである。調査を行った当該就労支援事業所では、服薬の問題が利用者の健康や生活の質、そして人生全体に大きな影響を及ぼしていることに気づき、通院同行支援などの独自の取り組みを行っていた。その結果として、減薬や断薬も可能になっていた。このような支援を行うにあたり、スタッフ自身も当事者会と連携するなどして、薬の問題を学び、エンパワーメントされていた。分析を通じて、服薬に関する当事者の自己決定力を高める支援の本質は、アドボカシーとエンパワーメントであることがわかった。 今後の研究の展開として、得られた他のインタビュー・データについてもSCAT分析を行っていくことが課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2018年7月6日からの西日本豪雨によって、自宅の前を流れる沼田川が氾濫した。それにより居住地域と勤務先大学も被害を受け、断水等の期間が続いた。また、被害が深刻な近隣被災地域へのボランティア活動にも参加した。以上により、研究の進捗にも影響を受けた。 なお、インタビュー調査自体は順調に進行しており、多くの協力者を得ることができた。しかし、質的調査法の性質上、音声データをテキスト化して、それらを分析する作業に時間が非常にかかるため、結果を出すのにもう少し時間が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
質的データ分析のための手法SCAT(Steps for Coding and Theorization)を用いて分析作業を進める上での課題は、時間がかかる点である。また、小規模な調査データの分析に適した手法とされるため、多量の質的データ分析を実施する場合の有効性に不安がある。さらに、カテゴリー化の方法やストーリーライン化等の作業が難しく感じるため、この手法を学ぶワークショップに参加するなどして、この方法を学ぶ機会を持ちたい。データ分析に時間を要する点に関しては、研究に集中できる時間を毎日確保して地道に分析作業に取り組んでいく。
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次年度使用額が生じた理由 |
もう1年、研究を延長したため。
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