研究課題/領域番号 |
17K18586
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研究機関 | 淑徳大学 |
研究代表者 |
松尾 加奈 淑徳大学, その他部局等, 助教 (60727478)
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研究分担者 |
藤森 雄介 淑徳大学, その他部局等, 教授 (20364896)
ゴウホリ ヨゼフ 淑徳大学, その他部局等, 准教授 (80611152)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | 国際ソーシャルワーク / 宗教 / 固有の知 |
研究実績の概要 |
本研究では、世界的にはキリスト教に次ぐ信者数を持つイスラム教に着目し、イスラム教信者が国民の多数を占める国(マレーシア・インドネシア・パキスタン・バングラデシュ)を対象としてソーシャルワーク教育カリキュラムにおける西欧とイスラム教の価値観の融合(あるいは摩擦)の検証、イスラム教によるソーシャルワーク機能を持つ実践活動とソーシャルワークの主流である西欧ルーツのソーシャルワークとの異同の検証とイスラム教の価値基盤に基づくソーシャルワークのモデルの提示と主流ソーシャルワークとの異同を考察することを目的にしている。 平成29年度は各国から1名ずつの研究協力者を選定するとともに、イスラム教徒でありアメリカでソーシャルワークの学位を取得した研究者にも本研究に参加協力を呼びかけ承諾を得た。現地での研究体制を確立し調査項目の共有をするため、研究代表者・分担者がバングラデシュ・マレーシアを訪問、イスラム教寺院およびイスラム系NGOの実践についてヒアリングによる調査を実施した。併せて中国・深センやザンビア・リビングストンで開催された国際会議において口頭発表を実施、アジア太平洋地域以外のイスラム系の国の研究者とも積極的に意見交換を行った。平成30年度は前年度に実施できなかったパキスタン・インドネシアの現地協力者との連携を強化するとともに、イスラム教の実施するソーシャルワークの機能を持つ活動と西欧のソーシャルワークが実施する活動との異同、信仰のつながりを重視する社会において信仰を切り離して専門職を目指すソーシャルワークが効果的に展開しうるための視座を検証していく。本研究はイスラム教徒ではない研究代表者が西欧の価値観に基づくソーシャルワークの常識を別の宗教の価値観で、国境を越え俯瞰的な視座で測りなおす挑戦的な研究であり、一連の過程を国際社会福祉研究方法の一モデルとして記録する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
インドネシアとパキスタンについて現地協力者を確保することはできたものの、平成29年度内に現地調査が終了しなかった。現在、現地の政治情勢を考慮しつつ渡航時期を調整中である。また調査項目について研究協力者とともに精査中であり、6月末を目途にインターネットにて各現地協力者に配布、ヒアリング調査を実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
調査対象国4か国を軸にアジア太平洋地域のイスラム教のソーシャルワーク機能を持つ活動の調査研究を進め、インターネットを活用しながら進捗状況を逐次確認する。 アジア太平洋にソーシャルワーク教育が伝播した歴史には、欧米による教育カリキュラム支援の影響が大きい。そのため調査対象国の協力者全員がイスラム教徒であるが、西欧に留学しソーシャルワーク教育を受けた第1世代である研究協力者と、留学後に母国で教鞭をとった第1世代の指導の下で学位取得した第2世代の現地協力者で構成されている。そこで、ドイツ、セルビア、トルコの3か国に古くから住むイスラム教徒とソーシャルワーク機能を持つ互助活動について、人類学的の視点を持つ研究分担者がヒアリング調査を実施、調査対象国で導き出される「イスラム教ソーシャルワーク」のモデルと、宗教・生活・福祉制度の面を地域性による差異検証の試料とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
①現地協力者の選定に当初予定していた時間よりも長くかかってしまい9月末に確定したことと、②調査対象国のうちバングラデシュへの渡航費について本研究費を使用しなかったこと、③パキスタン、インドネシアの実地調査未了のため次年度使用額が生じた。 今年度は実地調査完了及び研究会・ワークショップへの現地協力者の招聘、研究分担者によるトルコ・セルビア・ドイツへのヒアリング調査を計画している。
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