本研究の最終年度として、研究成果のとりまとめを行った。 環礁国であるマーシャル諸島、キリバス、ツバルの国民は近い将来、気候変動によって国外へ移住を余儀なくされることが予想される。今後発生するであろう気候移民が移転先で大きな支障なしに生活するための教訓を得るために、米国に在住するマーシャル諸島、ミクロネシア連邦、パラオからの移民の状況について調査研究を行った。これら3カ国の国籍を有する人々は米国にビザなしで居住し、労働することができるからである。 現在のところ、環境悪化によって他国に移住を余儀なくされる人々を保護する包括的な法的枠組みは存在しないが、各国には彼らが直面する問題を緩和するための法的手段と実践的な政策手段が多く存在していることが明らかになった。 マーシャル諸島では大学生の65%が海外移住の主な理由として教育を挙げており、次いで仕事(15%)、健康(8%)、家族(7%)、気候変動(3%)、自然災害(2%)であった。気候変動を理由に移住を希望する学生の割合は、マーシャル諸島でも3%にすぎず、火山島で構成されているミクロネシア連邦での割合(4%)と大差なかった。その一方で、マーシャル諸島やミクロネシア連邦からアメリカに移住した人が移住を決断した要因の一つが気候変動であり、帰国しない要因でもあることが明らかになった。また、マーシャル諸島とキリバスでは、宗教や文化より教育の方が人々の気候変動とその影響に対する認識に強く影響を及ぼしていることも明らかになった。 オーストリアのウィーンは伝統的に多数の移民や難民を受け入れてきた経験がある。ここでは移民が被る精神疾患を緩和するために有効な施策が実施されており、それが気候変動によって移転する人々の問題解決に有効であることが示唆された。
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