研究課題/領域番号 |
17K18592
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
小藪 明生 早稲田大学, 文学学術院, その他(招聘研究員) (30506142)
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研究分担者 |
高木 大資 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 講師 (10724726)
稲葉 陽二 日本大学, 法学部, 教授 (30366520)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2021-03-31
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キーワード | 社会関係資本 / ソーシャル・キャピタル / 地域レベル / 健康 / QOL |
研究実績の概要 |
本研究は社会系資本の各要素が、どのような空間的・地理的文脈・アウトカムと関連しているかについて調べることを目的として、実際に地域データを得るための調査を実施し、かつ過去に行った調査データとも関連付けながら、地域特性なども加味した文脈的要素に注目しつつ新たな分析手法の開発と検証を行うものである。2019年度では、昨年度までに実施した調査データの分析と、その分析結果の学会等での発表を主に行った。研究班会議については、貴重なデータを広く活用していただくことを目的として分担者だけでなく協力者をお呼びして実施した。 具体的には、昨年度までに長野県A市役所のご協力を仰いで「多世代が安心して暮らせる地域づくりに向けた調査」という題名で同市69町会毎に郵送送付して調査を実施したが、小地区別で得られたデータをどのように統合・分類するのか(町丁目、小学校区、旧村など)、地域の歴史的経緯や産業の状況などを踏まえて、どのような分析手法を用いるのか、などについて科研費研究班内で議論を行った。また本研究費によって実施された郵送調査データによって、町丁目・生活空間レベルについて新たなデータを補完することができたため、過去に研究分担者稲葉によって行われた全国の市町村レベルのデータと関連付けた分析が可能となり、複数の調査データのマッチングや比較分析の可能性とその適用方法、空間分析手法の本調査データへの応用方法についても議論を行った。 本研究によって得られたデータに基づき、世代間交流の地域差やその規定要因、地域の社会関係資本分析における適切な単位地区の探求、小地域レベルの協力行動と信頼に関する空間的分析などが行われた。また対象地域の文化・歴史的側面について、インタビューや現地視察・文献研究を含む質的研究も同時並行的に行われた。ここから、研究班の各自が学会報告、論文投稿などを行い複数の成果を上げた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度では、昨年度中に実施された郵送調査データの分析作業、研究成果発表が行われた。また、研究会議を新規の協力研究者も含めて行った。代表者・分担者ほかのメンバーは他の科研費会議でも顔を合わせる機会があるため、情報交換や進捗状況の共有は昨年度に引き続き良好である。 この科研費に基づいて行われた郵送調査については、既存調査データの活用と追加データベース購入を主な支出するとしていた当初の研究計画とは異なるが、対象自治体市役所に標本抽出を委託し調査実施主体となっていただくなど多大なるご協力を仰ぐことができ、同市の小地区を設計に入れたサンプリングを行い、個人情報にも配慮しつつより踏み込んだデータを入手することができた。同自治体のご協力のおかげで回収率も通常の社会調査よりも高い水準を達成できた(55.8%)。これは当初の研究計画に多少の修正を加えた結果、より良い状況で進展しているといえる。 またこれまでに実査を行った長野県A市役所の皆様向けに報告会を2019年8月に実施し、同市長様、健康福祉部長様、健康づくり課長様ほか15名の市役所関係者のご参加を得た。また研究班からは研究代表者、研究分担者3名と研究協力者の5名で訪問・研究報告を行った。また郵送調査を行った地域に研究班のメンバーが現地調査に赴く機会を得たことに合わせて、関係者へのインタビューや文献収集を含む質的研究も同時並行的に行われた。 2019年度では別途記載にあるように、これまで得られた調査データについて各自が分析を行い、複数の学会発表と論文誌掲載という成果に結びついている。このような成果もあり、進捗状況は基本的に良好であるといえる。他方、できればご協力いただいた自治体へのご報告も兼ねた研究成果報告書を作成した方がよいという、当初の計画にはなかったタスクを実施するため、その分の費用を残して研究期間の延長を行った。
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今後の研究の推進方策 |
期間延長を行った4年目は基本的に、これまで得られた実績を研究成果報告書としてとりまとめる作業を行う。当初計画の1~3年目までの目標についてはすでにある程度達成され、現段階でも本研究は成功裏に遂行されたといえる。その一方で、調査実施等で多大なご協力を得られた自治体への報告と、これまで得られた研究成果をとりまとめた報告書があるほうがより好ましいとの見解から、1年の延長を行いこの新たなタスクを遂行するものである。 上記に加え、延長で得られた研究期間を活用して、過年度に行われた実査データについてさらなる分析を行い、学会報告や論文誌投稿を目指す。その際、健康やQOL等のアウトカム指標との関連の分析だけでなく、いくつかの地区レベル別の分析結果の比較や、空間的分析、世代間の影響関係についてもさらに議論を進める予定である。データについては、当初の計画通り過去に研究分担者稲葉が行った既存の全国レベルなどデータを組み合わせつつ、都道府県、市町村、小学校区、町会などいくつかのレベルで分析と比較を行う予定である。本研究で実際を行った長野県A市に関しては、小学校区レベル、旧村、消防団担当地区などいくつかの地域集団単位と町会指標を関連付けつつ、また現地住民の生活空間や社会的つながりと地域の歴史・文化的な成り立ちについて関係者へのインタビューや文献収集を含む質的研究も適宜取り入れながら、研究を進める予定である。 科研費研究会議について年度内前半に1度実施を予定するとともに、これまでの各自のテーマに追加的に発表可能な内容については、メンバー各分野の関連学会にて研究報告と雑誌投稿を行うことを予定している。そしてこれらの研究成果を、今年度末に科研費研究成果報告書としてとりまとめる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
期間延長を行った4年目は基本的に、これまで得られた実績を研究成果報告書としてとりまとめる作業を行う。また科研費研究会議について2020年度内前半に1度実施を予定するとともに、これまでの各自のテーマに追加的に発表可能な内容については、メンバー各分野の関連学会にて研究報告と雑誌投稿を行うことを予定している。 2020年度は過年度分から繰り越された予算のみとなり、基本的には上記の今年度の研究活動に付随する予算として使用される。その内訳として、まず報告書製本印刷代にあてられる。加えて、今年度の学会報告・科研費研究会議開催に関わる支出、図書購入ほか関連する若干の物品購入に使用する予定である。
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