研究課題/領域番号 |
17K18594
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研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
久村 恵子 南山大学, 総合政策学部, 教授 (60350732)
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研究分担者 |
大塚 弥生 南山大学, 法学部, 准教授 (40233184)
山口 和代 南山大学, 総合政策学部, 准教授 (60387735)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 感情労働 / 感情労働化社会 / 適応 / 定性的分析 / 定量的分析 |
研究実績の概要 |
平成30年度は3年計画である本研究の2年目にあたり、前年度実施した文献調査とインタビュー調査の結果を整理しつつ、感情労働への適応プロセスのモデルを構築し、このモデルの定量的分析による検証に向けて質問紙調査の準備と実施を進めてきた。 具体的には、前年度に実施した18名からのインタビュー調査の結果より得られた音声情報をテキストデータへと変換し、感情労働とそれに伴い生じる心理的状況を定性的分析により精緻化すると共に、感情労働への適応プロセス・モデルの構築に努めてきた。特に、定性的分析においては、本来、感情労働職と位置づけられた職種およびそれ以外の職種において人々が従事している感情労働と判断される行動を整理している。と同時に、このような感情労働と判断される仕事に従事する際に生起する心理的変化についても分析を進めている。さらに、感情労働への影響要因と結果要因の側面からも分析を進め、感情労働により生じる結果の側面については論文「感情労働により生じる効果に関する考察―感情労働により人は何を得るのか―」(久村,2019)において発表した。 また、定性分析により導き出した感情労働に関わる要素の尺度化を進め、適応モデルを検証するための定量的データを収集するために質問紙を作成し、調査の準備と実施を進めてきた。調査手続きおよびその経過としては、インタビュー調査にて採用した3カテゴリーの職種に従事する人を対象に、留め置き式もしくは郵送にて2019年2月より配布し、現時点で288部(回収率62.7%)が回収されている。なお、2019年4月末までを調査期間としているため、現在も配付、回収を続けつつ、次年度の定量的分析に向けてデータの整理とデータベースの整備も進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、平成30年度内に質問紙調査を終える予定であったが、インタビュー調査に基づく定性的分析が遅れ、質問紙を作成するために必要な情報が得られず、かつ調査協力者の選定と依頼に時間を要した。さらに、調査協力者の業務の都合上、質問紙調査の開始時期が当初の予定より約3ヵ月遅れの平成31年2月中旬となった。そのため、調査終了時期も平成31年度4月末となり、年度を超えての実施となっている。 平成31年4月の現時点でも配付・回収を続けているが、同時にデータの整理およびデータ入力を進め、データベースを整備しつつあり、4月末に質問紙調査が終了し次第、平成31年度の研究課題である感情労働への適応プロセス・モデルの定量的分析による検証作業へと進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終年にあたる平成31年度は、前年度から実施している質問紙調査より、汎用性の高い感情労働尺度についてより精緻化を進めるとともに、本研究の目的である感情労働への適応プロセス・モデルを定量的に検証し、その成果の報告と研究の周知化を行う。 具体的には、平成29年度に実施したインタビュー調査のデータの定性的分析を引き続き進め、感情労働とそれに関わる心理的メカニズムを明らかにしていく(担当:大塚)。一方、平成31年度に実施した質問紙調査のデータにより適応モデルの検証を定量的に分析していく(担当:久村)。そして、一連の研究成果の周知のため、国内の学会(予定:日本人間性心理学会(担当:大塚)、経営行動科学学会(担当:久村))にて報告できるように準備を進めていく。 また、本研究結果を報告書にまとめると共に、投稿論文に向けて執筆を進めて行く。さらに、感情労働への適応プロセスを縦断的に解明するための追跡調査への準備(担当:久村、大塚)や、政府の留学生30万人計画により、大学卒業後、日本企業で働く外国人労働者の増加が見込まれることから、感情労働をめぐる認知差など異文化間での比較研究への展開可能性についても検討(担当:山口)を進めて行く。
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次年度使用額が生じた理由 |
3つの理由が挙げられる。第1に、当初、計画していたよりも質問紙および返信用封筒の印刷代が安くおさえられたためである。第2の理由は、質問紙調査を実施するにあたり、当初、質問紙の返却手段は主に郵送と考え、郵送代を予算に組み入れていた。しかし、調査協力者の多くから留め置き式調査での希望があり、個別による返送のための費用の多くが未使用となった。さらに、質問紙の配付・回収への謝金を辞退する協力者も多く、その点での予算が未使用となった。そして、第3の理由は、質問紙調査の実施が当初の予定より3ヶ月あまり遅れたため、データの整理および入力業務が3月後半からとなり、平成30年度に計上していた人件費の一部が未使用となったためである。 そのため、次年度使用額は、平成31(2019)年度の計画に組み込まれていない質問紙調査のデータ整理、入力、および基礎的分析業務のための謝金(人件費)に補填する計画である。さらに、本研究結果の学会報告や調査協力者への報告のための出張費、また感情労働への適応プロセスを縦断的に解明するための追跡調査への準備や、感情労働をめぐる認知差など異文化間での比較研究への展開可能性を探るための情報収集のため費用が必要になると予想され、その増額分を次年度使用額で補填することを考えている。
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