研究実績の概要 |
本研究の最終年である令和元年度の研究目的は、一連の調査の分析を進め、成果を報告し、周知化することである。まず、本研究で実施した2つの調査に関する基礎的な結果を報告書(久村ら,2020)にまとめ、調査協力者を中心に送付、周知した。 さらに、平成29年度に実施したインタビュー調査の定性的分析を継続し、感情労働とそれに関わる心理的メカニズム、さらにはその影響要因についてカテゴリー生成を進めた。特に、感情労働は「他者に向けて行われる」表面化した行動と、「自己の内面で行われる」表面化しない行動の2面から構成されていることを確認し、その結果概要を日本人間性心理学会第38回大会(大塚ら,2019/09/22)にて報告した。また「他者に向けて行われる感情労働」に関する結果については、定性的視点からの論文(大塚ら,2020)と定量的視点からの論文(久村ら,2020)にて公表した。 一方、平成30年度に実施した質問紙調査をもとに、まずは感情労働尺度の構成と信頼性の検証をした上で、3つの定量的分析を進めた。第1は、職種間における応対業務および感情労働の特徴についての分析であり、感情労働化する社会の実態を明らかにした。第2は、職種間における感情労働とそこから得られる効果についての分析である。その結果、感情労働はネガティブな効果ばかりではなく、ポジティブな効果ももたらし、特に技能系サービス職でその傾向が確認された。この2つの分析結果は、経営行動科学学会第22回年次大会(久村ら,2019/11/17)にて報告した。第3は、感情労働への影響要因についての分析であり、この結果は令和2年度に発表予定である。そして、感情労働化する社会における感情労働マネジメントのあり方を探究するために、この影響要因に関する結果を発展させ、感情労働への適応プロセス・モデルの一層の精緻化に取り組みたいと考えている。
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