本研究は、大規模地震災害下における被災者の避難者支援体制について、2016年4月の熊本地震の事例を検証し、課題を整理することを趣旨としている。特に、地域の障害者を積極的に受入れ、インクルーシブな避難所運営を行った熊本学園大学の事例の評価を、避難所システムを成立させた当事者による内部観察として行い、学際的な研究組織のもとに多面的な調査研究・検証を行ったものである。 本調査研究の基礎過程として災害避難所関連資料の入力・整理・目録化を完成させた。その主なものは、(1)避難者の相談経過記録を記した大ホール内の配置図、(2)本学避難所医療班のケース記録、(3)本学避難所常駐の市役所担当の記録、(4)本学避難所の避難者退所時記録、(5)避難所内掲示資料・行政からの通知など資料・写真資料・個人メモ・新聞記事。なお、これらの記録の公開の範囲については、勤務大学の倫理委員会で審査される。 また、障害者や高齢者の地域生活の脱施設化という流れの中で、災害時に福祉 施設への入所対応を求め、避難所自身が「施設化」する傾向を実証的に検証できた。今後の被災者支援のあり方についての提言につなげる方向性を明確にできた。 この避難所の特質を明確にするために、熊本市内の同規模の避難所および近郊の町村の避難所の資料収集および関係者への調査をおこない、熊本地震下で県下に数多く設けられた福祉避難所は、受入れ人数やマッチングの観点からうまく機能しなかったことが明らかになった。また、高知市を始め大規模災害に備えている自治体を訪問し、本調査結果の活かし方についても検討した。なお研究成果は、今後さらに学会などで発表される。
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