研究課題/領域番号 |
17K18605
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
齊藤 真善 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (50344544)
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研究分担者 |
安達 潤 北海道大学, 教育学研究院, 教授 (70344538)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | ASD / 授業研究 / 眼球運動 |
研究実績の概要 |
通常学級における一斉授業場面(小学校第3学年)を撮影したビデオ映像を、成人定型発達18名(以下、NT群)と成人ASD8名(以下、ASD群)に視聴してもらい、授業内容の理解度および教室環境に対するストレス度を構造化インタビューにより調査した。また、視聴中は、TobiiGlasses2を装着してもらい、眼球運動を記録した。ビデオ映像は、討論が活発なアクティブラーニング形式の授業場面(算数科)と板書と解説を交互に繰り返す形式の授業場面(社会科)の二場面(授業の冒頭15分間)であった。 理解度は、両方の場面で、ASD群はNT群に比べ低かった。特にアクティブラーニング形式の授業の場合「教師による教示の意図がつかみにくい」、「教師-生徒間並びに生徒-生徒間の対話の速さ、クロストーク状況に理解が追いつかない」などの内省報告があった。ストレス度は、両方の場面で、ASD群はNT群に比べ高かった。特にアクティブラーニング形式の授業の場合、ASD群の全員が、教室内に充満する音声情報にたいして強い不快感を訴えた。眼球運動を分析した結果、ASD群はNT群に比べ、視点の集中度が高かった。特にアクティブラーニング形式の授業の場合、主に教師に視点が集まる傾向にあった。この傾向は、教師-生徒並びに生徒-生徒間の対話中にも生じていることから、偶発的に生じる対話はASD者にとってノイズ(関連ない情報)になっていることが示唆された。この結果に対して数名のASD者から「情報の発信元である教師を見ることによって、説明を聞き漏らさないように努めた」といった内省報告があった。 以上、成人ASDを対象とした研究から、通常の一斉授業において、感覚過敏、シングルフォーカスといったASDの特性と適合しない授業形式が採用された場合、理解度、ストレス度、眼球運動パタンが、NT群と異なることを確かめることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、実際の教室場面で眼球運動の計測を行う予定であったが、ASD群の研究協力者が、当初予定していたよりも増加したため(2名→8名)、定型発達者との比較対照実験に方法を修正した。授業場面を記録映像に切り替えたことにより、視聴条件を統制でたので、より客観的な知見が得られたと考えている。 H29年度は「(1)成人ASDによる授業モニタリング調査による一斉授業の問題点の検討」に費やされたため、H30年度は「(2)人的学習場面とコンピューターによる学習場面の相違点についての検討」と「(3)授業・教材デザインの構造化と視線の動きの効率化の関係についての検討」について早急に検討する。研究協力者の確保できており、眼球運動測定のための場面設定やコンピューター教材の選定が済み次第、速やかにデータを集める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画の変更は現段階ではない。計画書通りに今後も研究を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費(TobiiGlases2)が、当初予定していた価格よりも安く購入できたため。最終年度までに、実験に必要な機器(PCなど)、分析ソフトウェアの購入を予定している。
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