研究実績の概要 |
本研究は,日本の大学における卒業研究の成績評価方法について,文系(学校基本調査の学科系統分類で人文科学及び社会科学に含まれる)学科の学士課程教育に限った上で,その現状を実証的に明らかにすることを目的とする. 平成30年は,社会科学系の1,044学科を対象に「卒業研究の成績評価に関する調査」を実施した(有効回答率25.3%,n=264).その結果を分析した主な知見は,以下の5つにまとめられる. 1)卒業研究に係る授業科目の成績評価においては,専門の知識・技能を活用できることや独創性を発揮することよりも,主体的な学習態度や計画的にやり遂げる力,そして伝わる文章が書けることが考慮されている.2)学修成果を見るための課題としては,論文が主であり,卒業研究に係る授業科目がある学科のうち,90%以上が課している.3)どの課題においても,採点は指導教員個人に任されていることがほとんどで,学科として明文化された採点基準を導入している例は依然として少数派である.4)学科系統に関しては法学・政治学系学科に特異性がある.「卒業研究は一部の学生のみが経験するもの」という認識が,法学・政治学系学科では強いと推察される.5)入試難度の影響は,成績評価方法よりも考慮される学修成果において明確である. 入学難度によって卒業研究に期待する学修成果が異なるというよりは,下位の場合にそれが少ない. なお,調査結果は学科系統別に集計し,本研究にかかるwebサイト「学士課程カリキュラム研究会」に掲載した.
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