研究課題/領域番号 |
17K18609
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
内田 千代子 福島大学, 人間発達文化学類, 教授 (80312776)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | いじめ / 自殺 / 子ども / 動物介在教育 / レジリエンス / 福島放射線被害 / 不安 / ソーシャルスキル |
研究実績の概要 |
我が国ではいじめを苦にした小中学生による自殺は、最近も数件続けて起こっており、この問題は減少する兆しを見せない。本研究では、米国で開発されたマティグリーカリキュラム改修版を、複合的なストレスにさらされた福島の小学校で試みる。これは、動物とふれあい、動物を題材にして、子どもの精神的な発達と社会性を育もうとするカリキュラムである。動物と人間の相互交流についての研究と、社会性と情動の学習(SEL)とレジリ エンスモデルに基づいて、ソーシャルスキルと情動的なスキルを習得させる方法である。自分の感情のコントロ ールと共感性や思いやりの心が育ち、悲しんでいる人を助けたり、喧嘩を止めたりするような社会性のある行動が増えて、いじめ防止に役立つことを明らかにし、福島県の被災地の小学生の不安症状の改善にも役立つことを明らかにすることを目的としている。 米国Yale 大学Child Study CenterでのMutt-I-grees カリキュラムについての指導を受け、その意義と実現性についてのディスカッションを行う機会があった。研究代表者を中心にした研究協力者とのチームで翻訳作業を行い、専門家による翻訳のチェックを行った。未だ完成ではないが見通しがついている。 いじめ予防を目指した、日本の現状に適した改修版カリキュラムの作成についての議論を進めて、ほぼ完成に近づいた。当初、教師対象プログラムも作成を考えていたが、オリジナルに沿って、小学生対象プログラムを基にしたものを中心に作成している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
翻訳、改修版カリキュラムの完成には至ってないが、ほぼ見通しがたっている。米国Yale大学のカリキュラム主催者からの指導を受けてカリキュラムの理解を深め、また、福島での実施への準備、現場との話し合い等を進めており、ほぼ順調である。
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今後の研究の推進方策 |
Mutt-I-grees カリキュラムの翻訳を完成させ、いじめ予防を目指した、日本の現状に適したカリキュラムの作成を完成させる。その改修版Mutt-I-greesカリキュラムを、福島県内の小学校で3年生のクラスに5回または10回のセッションを実施する。現場の学校で実施可能なカリキュラムの方法について福島県内の関係者との議論の中から、全カリキュラムの実施は困難であるので、5種類のテーマから1単元ずつ、あるいは2単元ずつを選び、5回または10回の実施とすることが適切と結論した。さらに、「放課後児童健全育成事業」の学童保育での実施を計画している。 教師あるいは指導者と児童 を対象に、実施前後と半年後に質問紙調査を行う。非実施群(クラス)にも行う。いじめについて、共感性、学校の雰囲気について、向社会(pro-social)行動に関してなどの項目を、実施群では経時的に比較し、また実施群と非実施群とで比較し、いじめ予防の効果を検討する。また、生徒に、不安についての質問紙調査も行い、不安症状の改善効果を調べる。 米国での研修や議論、研究発表のほか、改修版Mutt-I-greesカリキュラムの出版、米国からDr.Finn-Stevensonを招いてのシンポジウム主催も計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度に予定していた翻訳が完成せず、また、心理質問紙の購入、実施のための冊子製作、カリキュラム出版、海外研修などが実施できなかったため次年度使用が生じた。次年度使用額は、翻訳、カリキュラムの出版、研究調査、および海外研修等に使用する計画である。
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備考 |
2018年1月に福島大学子どものメンタルヘルス支援事業推進室主催の研修会「子どものメンタルヘルス支援の実践」において、「青少年のいじめ・自殺の現状と予防」と題して研究発表をした。
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