研究課題
我が国ではいじめを苦にした小中学生による自殺は減少する兆しを見せない。本研究では、米国で開発されたマティグリーカリキュラム改修版を、複合的なストレスにさらされた福島の小学生に実施を試みた。これは、動物とふれあい、動物を題材にして、子どもの精神的な発達と社会性を育もうとするカリキュラムである。動物と人間の相互交流についての研究と、社会性と情動の学習(SEL)とレジリエンスモデルに基づいて、ソーシャルスキルと情動的なスキルを習得させる方法である。自分の感情のコントロールと共感性や思いやりの心が育ち、悲しんでいる人を助けたり、喧嘩を止めたりするような社会性のある行動が増えて、いじめ防止に役立つことを明らかにし、福島県の被災地の小学生の不安症状の改善にも役立つことを明らかにすることを目的としている。米国Yale 大学Child Study Centerでの指導を受け、小学校1年生から3年生対象カリキュラムの日本語版を作製して、福島県内の「放課後児童健全育成事業」の学童保育で小学1年から5年生くらいを対象にカリキュラムを実施した。指導者と児童に実施前後での質問紙調査を行い、保護者には実施後の質問紙調査を行った。さらに指導者にはインタビューを行った。質問紙調査結果からは、感情に気づくこと、感情のコントロールに対してカリキュラムの教育的効果が考えられ、いじめ予防にも役立つ可能性が示唆された。また、発達障害のある子どもの様子から、今後このカリキュラムを発達障害のある子らに適用する意義が推測され、その方向での準備を行った。米国での研究会では、マティグリーカリキュラム実施を通して明らかになった、日米の教育環境や教育理念の違いについて言及した。
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