この研究課題は、日本語と日本文化の保存・刷新・発信のための、分野横断的な課題を設定し、いくつかの作業を同時並行して走らせた。1、日本語の翻訳・発信という課題と、2、日本文化の頂点的な達成の理解・発信という課題と、この2つである。1つめは3つに細分化され、1-1、漢字を用いて翻訳された学術語を、大和言葉でも翻訳しなおすこと、1-2、キーワードを、原語、漢字による翻訳語、大和言葉による翻訳など、併記すること、1-3、翻訳語ではない日本オリジナルのキーワードを発見、発明、発信すること、を行なった。2つめは、日本の頂点文化の典型例として、能、茶道、武士道、神道、和歌に焦点を絞り、その特徴を検討し、それらをより魅力あるものとする方向を検討した。 最終年度、2019年9月には、研究グループの一人である、バルセロナ自治大学のグスタボ・ピータ氏を招へいして、国際シンポジウムを開催した。国内の専門家には、能、茶道、神道の発題を依頼し、私自らは和歌をテーマに発題し、コメンテーターには敢えて分野を異にする研究者を選んで、挑戦的な議論を展開した。 なお、日本の頂点文化の代表である和歌について、みずから長年実作をしてきたものを、日守麟伍のペンネームで、2冊の単行本として刊行した。1冊は、伝統的な歌物語、歌日記の形をとった作品に解説を加えたもの、もう1冊は、和歌のみを抜粋した和歌集である。これはもちろん趣味であるが、文化の研究と実践という意味で、人文研究の1つのスタイルを提案したものでもある。 各年度のシンポジウム、研究会、研究成果は、随時ホームページ(http://pip-japan-project.jp/project/)で公開した。また、著作物は、本務校のデジタルアーカイブズ(つくばリポジトリ)に、アップしている。
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