研究課題/領域番号 |
17K18612
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
北村 友人 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 准教授 (30362221)
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研究分担者 |
佐藤 真久 東京都市大学, 環境情報学部, 講師 (00360800)
草なぎ 佳奈子 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 特任研究員 (00777873)
小貫 元治 東京大学, 新領域創成科学研究科, 助手 (20376594)
廣里 恭史 上智大学, 総合グローバル学部, 教授 (40262927)
塩見 淳一郎 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (40451786)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | ESD / スウェーデン / 比較研究 / 中等教育 |
研究実績の概要 |
近年、「持続可能な開発のための教育(Education for Sustainable Development: ESD)」という新しい教育のアプローチが提唱され、国連教育科学文化機関(ユネスコ)を中心に世界各地で議論と実践が積み重ねられている。ESDは、「持続可能な社会づくりの担い手を育む教育」を目指しており、「持続不可能な社会形成に加担してきた従来の教育のあり方を問い直そうとする運動」(永田2010)、学習者が自身や社会を変容させる能力を付与するという意味において、変容をもたらす教育である。こうした教育を国際的に先導している国が、特に日本とスウェーデンである。
そこで、本研究ではESD先進国とされている日本とスウェーデンの比較研究を通じ、特に今後日本で重要となってくるESDの①経済的側面、②社会文化的側面、③科学技術的側面に焦点を当て、効果的なESDに必要とされるカリキュラムや教授法のイノベーションについて、実践事例にもとづき明らかにする。また、ESD概念の理論化とこれをモニタリング評価する指標を開発し、ESDの効果を実証的に明らかにする方法論を確立する。そのために、本研究では高等学校に焦点をあてる。
学習形態が知識習得型から個人と社会の変容を促すものへと変化する中、教育に期待されているのは、批判的思考力と問題解決力をもって具体的な行動を起こす力をつけることである。そのためには教育を中心に、社会学・政治学・経済学・工学・サステナビリティ学などの諸学問領域の知見を幅広く活用し、総合的なアプローチが求められている。このため、経済・社会/文化・科学技術と分野横断的にESDを分析することで、個人の社会的経済的平等を保障する持続可能な社会の実現に資するスキルや資質を分析し、ESDの内容・方法に関する新しいアプローチを提案する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の初年度であり、資料・データの収集、先行研究のレビュー、聞き取り調査などを行った。主に取り組んだ研究科都度は、次の2点である。 (1)先行研究のレビュー:日本・スウェーデンのESDの取り組みのうち、特に社会変容や社会問題に対応した先進的な事例に関連した文献のレビューを行った。 (2)海外調査の実施:学校行政関係者に質問調査・聞き取り調査を行った。とくに、スウェーデンと日本でそれぞれ2校の特長が異なる高校を訪問調査し、日本とスウェーデンにおけるESD取り組みの現状を理解した。 これらの取り組みを通して、ESDの推進がSDGsの実現にどのように貢献していくかという観点から研究を進めていくことの重要性に気づくことができた。この視点を、2年目以降の研究に活かしていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の2年目であり、現地調査とその結果の整理、資料の収集・分析、教育指標の開発を予定している。主な取り組みは、以下の3点である。 (1)指標の開発:ESDの実践をモニタリング・評価するための指標を開発する。 (2)企業の視点:企業がどのようなスキルやコンピテンシー資質・能力を期待しているのかを探る。特に問題解決能力、コミュニケーション能力、情報収集能力等のソフトスキルと呼ばれるスキルや、創造力、分析力、柔軟性などの能力の育成とESD教育の関わりを検証することで、経済・社会活動と連携した分析を行う。 (3)事例研究:両国の高等学校におけるESDの現状を探るため、特徴的な実践に関する事例研究を行う。またESDを実践していない学校と比較検討する これらの研究を進めるなかで、とくにSDGsへの実現へ向けた取り組みとしてのESDの役割に注目していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は主に先行研究のレビューと学校訪問調査を行ったが、学校訪問調査を行うにあたり、研究協力者であるストックホルム大学の研究チームが自前の研究資金を大学内で確保し、それを本研究プロジェクトのメンバーたちも使用することができたため、今年度は計画した研究活動を行うためにすべての研究費を支出する必要が生じなかった。一方、次年度は、今年度から繰り越した研究費を活用して、学校訪問調査の対象校の数を増やす予定である。
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