令和3年度は主に技術的な検証を中心に実証実験を行った。技術的な観点からいうと本研究開始時に比べると、大きくARを取り巻く環境が変わってきており、当時のスマートフォン、タブレットにおいては十分なARの機能がついていなかったが、現在ではiOS、Android共にほとんどの端末がARに対応している。またその機能も十分に装備されてきており、3Dモデルの位置の移動・スケールの変更や、深度機能によるオクルージョン表示への対応が開発を伴わず行うことができるようになった。ARに対応する3Dモデルのファイル形式も統一化され(iOS:usdz、Android:glb)フリーウェアを含む一般のソフトウェアで簡単に変換できるようになっている。特にiOS、OSXでは「Reality Composer」や「Reality Converter」といったARの開発環境が整っており、開発自体も容易に行うことができるようになった。オンライン上で3Dデータをライブラリ化することで共有してARを実現する機能を持つサイトも登場しており、ARの市場自体が世の中から期待され、成熟してきた印象を持つ。従って当初の目的である「隣に並べたり、重ね合わせることで模刻像との相違点を確認する」という点では誰でもそれらを実現できる環境やインフラが整備されたことについては大変好ましいことである。今後3Dデータと模刻像を比較するために必要な基準点・基準面を表示して、精度検証をしやすくしていくことで、模刻自体のやり方も変化していくことが期待される。
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