オンラインテストで自動採点されるものの多くは,多肢選択式,正誤判定式,数値入力形式などであるが,解答として数式を入力する形式のシステムが注目され,数式自動採点が可能となってきた。しかし,従来の解答形式と同様に,オンラインテストシステムで自動採点の対象となるのは,学生が思考した結果としての解答のみであり,その解答が誤答であった場合,どこで躓いているかを十分に把握することは困難であった。そこで,本研究では解答だけでなく,計算過程など,解答に至る思考過程を記述した手書きノートを提出する仕組みを構築すること,そして,手書きノートを詳細に解析し,教師の「経験知」を活かしながら, 誤答とその原因となった思考過程の躓きを明確にするための解析手法の提案を目的としている。 我々は,詳細な手書きノートの解析のために,ノートの筆記ログ(タイムスタンプとともに保存される,筆記データ,消去行動データ)を蓄積することのできる仕組みを構築した。また,以前はSTACKの解答タイプの一つとして開発していたため,手書きノートはSTACK以外の問題タイプでは利用できなかったが,今回は,LMSの一つであるMoodleのquestion behaviorプラグインとして開発することにより,STACK問題タイプだけではなく,多肢選択式の問題にもノートを添付して提出することが可能となった。また,ノートの添削機能はクイズモジュールのレポートタイププラグインとして開発し,これも汎用性が担保されている。 これらのツールを活用して手書きノートのデータの解析を試みたが,学習者の特性としての定性的な評価にとどまった。例えば,筆記速度が早くすらすらと問題を解いているように思えるが,訂正の回数が多い学生よりも,筆記速度はそれほど早くはないが,訂正が少なく,結果的に理解が定着していると推測されることなどである。
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