研究課題/領域番号 |
17K18628
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
渡邊 洋子 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (70222411)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 初年次教育 / 生涯キャリア / 専門職養成 / 専門教育 / キャリアデザイン / 学生主体型イベント / キャリア直結型学部・キャリア非直結型学部 / 自己主導型学習 |
研究実績の概要 |
本研究は、四年制大学の①特定の専門職養成に直結したキャリア直結型学部(医歯学部・看護学部等)、および②進路を特定せずに関心分野で受け入れるキャリア非直結型学部(法学部・理学部等)の双方で、初年次の専門教育(あるいは初修専門教育)と生涯を通じたキャリアデザインへの教育を効果的に接合する方途の模索に実践的に取り組み、そこに即応したプログラム開発を試みるものである。 平成29年度は、①全国の動向調査、②異動・赴任先でのキャリア創生研究会の組織化と活動、③同研究会の実践研究としての学生主体キャリアイベントの実施、多面的振り返り、それらの記録・活字化・ジャーナル特集記事への取りまとめ作業、④医学部における初年次授業「自己主導型学習」の実践研究の継続と論文化などがある。 ①では、キャリア直結型学部の典型例として医学部に注目し、初年次専門(職)教育の実際に関するインターネット・文献での実態調査を実施した。②では、2017年4月に異動・赴任した新潟大学創生学部において、経営学、メディア学、会計学、心理学、社会科教育学など複数領域の有志教員と、キャリアに関する研究会を結成し、専門教育とキャリア支援について各領域での実態と課題の共有作業を行っている。③では、同研究会において、実践研究のための共通基盤構築の取り組みとして、有志学生を募り、学生主体型キャリアイベントを企画・実施し、当日の記録とその多面的な振り返りを研究会ジャーナル『創生ジャーナルHuman and Society』の企画特集として取りまとめた。④同授業は、於:奈良医科大学)のに関わる申請者自身の2013年以降の実践経験について、同大医学教育開発センター藤本眞一教授と共同で、同授業の実践的評価と課題などに関わる論文を執筆し、同大紀要に投稿するために準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2017年4月に勤務先の異動があり、申請時とは研究環境や研究状況が大きく異なったため、研究を進めるうえでの困難が予想されたが、以下のような展開があったために、予想以上の純情な展開が見られている。①創生学部において、異なる専門領域を足場とする複数の教員が自分野におけるキャリアとキャリア支援を考える研究会が組織されたことによって、多領域における良質の情報収集や状況把握、およびそれらを踏まえた横断型議論が可能になったため。②同研究会が、創生学部をキャリア非直結型学部の典型と捉え、実践研究のフィールドとして取り組んだ学生主体型キャリアイベント「女性と男性がともに人間らしく働くために」(2018年2月10日)を実施することができ、キャリア非直結型学部における初年次キャリア教育への示唆や手がかりが少なからず得られたため。③奈良県立医科大学との良好な協力関係が維持され、授業「自己主導型学習」の継続のみならず、より発展的な実践研究としての展開の可能性が検討できる段階になったため。
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今後の研究の推進方策 |
Ⅰ 初年次専門(職)教育とキャリアデザイン/キャリア支援教育の両方を実施する大学学部を選び、訪問・ヒアリング調査を行う。【国内旅費、人件費・謝金、消耗品費】 Ⅱ 早期専門教育early exposureの導入や教養教育の再構築など、海外(イギリス・アメリカ、中国など)の学士・専門職 教育改革の先進的(特徴的)事例の実地調査【外国旅費、消耗品費、その他】事例としては、イギリスでは、成人教育原理が専門職教育に多大な影響を及ぼしており、例えば、キングズ大学医学校、クィーンメリー大学医学校、ダンディー大学医学校が挙げられる。またアメリカでは、キャリア教育の理論的・実践的蓄積が顕著であり、例えば、カリフォルニア大学デービス校医学部 イリノイ大学シカゴ校などがある。また中国の北京師範大学や香港大学、カナダやフィンランドの医学校や大学医学部についても情報収集を進めたい。 Ⅲ 奈良医科大学で行ってきた「自己主導型学習」プログラムをモデル化する作業とともに、他の専門職版の作成・試行に向けた作業を行い、汎用性を関係者と研究協議する。 Ⅳ 学生主体型キャリアイベント、およびⅠ・Ⅱの調査結果を踏まえて、キャリア非直結型学部における「初年次=生涯キャリアデザイン」プログラムの可能性を検討する。【国内旅費、人件費・謝金、その他】
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次年度使用額が生じた理由 |
本科研の初年度報告書に相当する『創生ジャーナルHuman and Society』創刊号の印刷・刊行・送付のために予算を計上していたが、キャリアイベントの記録・考察などのとりまとめに多くのエネルギーを要し、また刊行物としてもゼロからの立ち上げであったために、年度内に編集作業が完了しなかったため。現段階では予定したすべての原稿が集まり、査読実務を含む印刷前の最終作業を行っており、近日中に印刷に入る予定である。
なお、同ジャーナルは、創生学部教員有志によるキャリア創生研究会の編集委員会が刊行するものであるが、同研究会自体が、本科研のテーマへの問題関心を共有する教員の共同研究的取り組みとしてスタートし、継続的に関連の研究活動を実施していること、また同研究会が呼びかけ、学生キャリア研究会との共催で2月10日に実施した、学生主体キャリアイベントの記録・報告、および特集論文など、本誌自体が特集記事として(特集号のような形で)編集したものである点、自由投稿論文も、キャリアや学部教育を取り上げたものである点などから、同ジャーナルの印刷・刊行・送付費用に、初年度本科研費残額分を使用することは、本研究費の使用目的に照らして、適切かつ妥当であると考えている。
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