研究課題/領域番号 |
17K18628
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
渡邊 洋子 新潟大学, 人文社会科学系, 教授 (70222411)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2021-03-31
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キーワード | 生涯キャリア / 初年次教育 / キャリアデザイン / キャリア(非)直結学部 / 文理融合 / 学生主体 / 医学教育(卒前/学部教育) / 入学者選抜 |
研究実績の概要 |
2019年度の研究活動は、主にキャリア創生研究会の活動を基盤として展開し、その成果を取りまとめる形で進めてきた。具体的には、金沢工業大学の文理融合型教育と学生支援に関する実地ヒアリング調査、選択授業「地域・国際交流B」における学生主体の国際交流活動のフォローアップ、現代大学教育における「文理融合」の実態とそのあり方に関わる意見交換と分担研究、創生学部自然科学系教員を迎えての「文理融合」をめぐる座談会、現職公務員を招いての学生主体キャリアイベントの実施・実践研究などが展開された。これらの成果の大半は、『創生ジャーナルHuman and Society』第3巻に「特集」や実践報告などの形で掲載することができた。 代表者の執筆した同特集の巻頭論文「キャリア直結学部と非直結学部の『文理融合』への視座」は、本科研の成果の一つとして特筆される。同論文では、キャリア直結学部と非直結学部の双方において、鍵概念としての「文理融合」やその具体的様相が、どのように異なる形で展開されているかを、考察した。また代表者が本研究と関わる問題意識から取り組んでいる上記授業での1~3年の学生による国際交流活動の実践報告「2019年度 新潟大学創生学部 学生国際交流の取り組みー授業「地域・国際交流B」の到達点と課題ー」も取りまとめた。 合わせて、キャリア直結学部において初年次教育のもたらす意義に関わる議論も行った。同誌自由投稿の研究ノートとして「医学部入試と医学教育、生涯キャリアをつなぐ初年次教育ーカナダ・マクマスター大学の事例からー」では、一昨年のカナダ実地調査を踏まえ、医学部の「入学者選抜ー学部教育ー生涯キャリア」の一連の流れにおいて、初年次教育が、どのように入試と学部教育を架橋し、さらに生涯キャリアにまで視野を拡げ得るのか、同大学の事例の考察を通して検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本科研を起点に、創生学部の有志により生まれた「キャリア創生研究会」は、代表者(生涯教育学)に加え、公法学、メディア研究、経営学、心理学、社会科教育学という多学問領域のメンバーで組織され、活発に研究活動が展開されている。このことが、本科研の研究テーマを多面的・発展的に探究し、深めていく上で、大きな推進力となっている。対外的には、1年目に昭和大学富士吉田キャンパス、2年目に金沢工大を全メンバー6人で訪問・実地調査するとともに、相手方の関係教員・職員との実践・研究交流も行ってきた。本研究は、このような多面的・双方向的な研究交流の中に位置づいており、本科研の助成・支援により創刊された研究会誌『創生ジャーナルHuman and Society』には、このような取り組みの成果のほぼすべてが盛り込まれている。これらの研究交流はまた、学部内での領域横断的研究を促進する起爆剤ともなっており、設置4年目を迎える同学部において、初年次教育の在り方や可能性をめぐる議論や意見交換にも大きく貢献している。以上を踏まえ、本研究の進捗状況は、(1)に該当すると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
上記のように、この3年間で、当初の計画以上の実践研究の取り組みが可能になったが、本科研の研究課題に即応した取りまとめには、さらに理論的・実践的探究を続けながら、総括的議論と論点整理を行う作業が必要となる。 それゆえ、2020年度においては、①これまでの理論・実践研究から得られた生涯キャリアデザインと初年次教育に関わる知見や示唆をミクロ・マクロの視点から整理すること、②キャリア直結学部と非直結学部の双方における初年次(およびそれ以降)のキャリアデザイン教育のプログラム開発に向けた具体的提起を行うこと、③「異種異質共生」、「文理融合」、「国際・異文化交流」などのキーワードとともに、卒業後の生涯キャリアをも見据えた初年次教育の可能性を展望し得るような汎用的示唆を取りまとめること、を課題としたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本テーマのより深く多面的な掘り下げと成果の総括的・汎用的示唆を含む取りまとめに向け、より発展的・持続的な研究活動の展開が望まれたため。本研究におけるキャリアデザインと初年次教育という二大テーマに関わって、これまで3年間で積み上げてきた実践研究や理論研究を改めて振り返り、論点整理と実践的示唆の抽出、それらをもとにしたプログラム開発などに向けて、包括的な総括を行うべく、次年度の取り組みが必要になった。助成金は主にその総括に向けた研究会活動に使用する。
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