本研究の目的は、大学において教学マネジメントに関する役職をはじめて経験する中堅教員(40代の准教授および若手教授層)が、これらの役職に必要な知識・スキルをスムーズに修得する上で必要な方法論を特定化することである。大学教員は授業や研究指導については学生時代から自身の指導教員などの実践事例を知る機会があるが、大学の管理・運営について学ぶ機会はほとんどない。このため日本の大学では多くの大学教員は、本来は教育・研究に充てるべき時間や労力を、会議や打合せ等の運営業務に必要以上に費やす傾向がある。本研究では、大学教員が教育・研究上の生産性を維持するには、教学マネジメント(教育と学修に関する管理・運営業務)についてどのような知識とスキルを身につける必要があるかを明らかにする。 令和元年度は、これまで収集した各種資料をもとに、日本の大学中堅教員が抱える役割葛藤の実態調査の結果と、アングロサクソン諸国における教学マネジメント能力形成の方法論をすり合わせた。これにより、報告者の本務校である神戸大学の教員用研修教材サイトを立ち上げた(大学教育推進機構のホームページ内)。また、英国ブリストル大学のブルース・マクファーレン氏の著書(Intellectual Leadership in Higher Education)を『高等教育における知的リーダーシップ-大学教授職の使命』(仮称)として訳出した。本訳書はほぼ完成し、令和元年度中に玉川大学出版部から出版する予定であったが、新型コロナウイルス感染の広がりにより出版が遅れている。令和2年(2020年)夏までに刊行予定である。
|