宇宙教育は、宇宙開発利用を担う人材育成や、科学・技術教育充実の手段として重要である。本研究は、バーチャルリアリティ(VR)技術を利用した宇宙教育プログラムの開発と効果検証を通じて、中等教育における宇宙教育の展開に資することを目的として企画した。ソフトウェアとしては、国立天文台4次元デジタル宇宙プロジェクトで開発されたMitaka for VRを利用した。本研究に先立ち実施した理科教員対象の質問紙調査から、中学校では、宇宙に関する授業を行う上での課題として、空間的思考力の不足や観測が難しいことを挙げる回答が多くみられた。VR利用は、これらの課題を解決する手段となることが期待される。 本研究では、(1) 中学校理科天文分野の学習内容のうち、視点移動に関わる思考を必要とする「日周運動と自転」および「年周運動と公転」の内容について、VRを利用した少人数対象の授業を設計し、2018年度に中学校において試行実験を行った。また、(2) 地球から遠ざかりながら視野を拡大し、太陽系および銀河系のスケールや構造等を観察する授業プログラムを設計し、2021年度に中学生を被験者として評価実験を行った。(1)(2)を通じて、被験者への質問紙調査から、VR利用が学習者の興味・関心、学習意欲を高める上で有効であることが強く示唆される結果が得られた。一方で、VRを利用した授業と利用しない授業の学習効果比較等については、研究期間のCOVID-19感染症の影響等により、統計的解析に十分なサンプル数が得られなかった。2022年度(最終年度)には、上記(1)、(2)の試行も踏まえた授業内容改善と、宇宙探査機表示機能を利用した宇宙探査・宇宙技術に関する学習プログラムの検討を行った。今後、評価実験を継続・改善してVR利用の学習効果の評価を行うとともに、その利用普及の活動の展開を計画している。
|