大学におけるセクシュアルマイノリティ学生支援体制構築を考えるため、2022年度は海外の大学を対象に、支援体制の調査を行った。2020年にアメリカのstate and territorial universitiesとカナダの大学のウェブサイトを調査した際に抽出された、セクシュアルマイノリティ学生を専門にサポートするセンターや部署を持ち、メールアドレスが記載されている305大学に対して調査依頼のメールを送付し、22大学から回答があった。部署名や支援対象、スタッフ数、スタッフの持つ資格、部署が実施している事柄等を尋ね、部署の支援対象は「学生のみ」が27.3%、「学生と教職員」が18.2%、「それ以外も対象」が54.5%で、「それ以外」は学生の家族、高校生、受験生、卒業生、地域住民、地域コミュニティであった。スタッフの持つ資格については、ソーシャルワーカー資格(4.5%)、関連分野での修士号や博士号(45.5%)で、資格ではなく「sexual minorityであること」や、「LGBTQコミュニティの一員であること」「当事者と関わりサポートした経験があること」等の回答もあった。実施している事柄については、回答した全ての大学が行っていたのが、「イベントの開催」と「関連する資料の貸し出し」で、その他実施大学が多い順に「ボランティア学生の育成」「勉強会やワークショップの開催」(72.7%)、「サポートグループの開催」「学外の医療機関に紹介」(63.6%)、「啓発用の資料や広報誌の作成(59.1%)、「就職のサポート」(54.5%)、「奨学金を提供」(45.5%)であった。回答大学が少なかったため、本調査の結果が海外の大学の全体的な様相を表しているとは言い難いが、今後の日本の大学における支援の方向性を考える上で参考となるものが得られた。
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