全国の視覚特別支援学校7校に勤務する点字使用者45名の研究協力者に対して,新聞記事を読材料として使用して,1分間に音読する両手読速度と左右の片手読み読速度を計測した。同時にその様子をビデオに録画した。そしてこのビデオ画像を動画分析ソフト(Kinovea 0.8.24,Kinovea社製)に取り込み,1秒間25コマの速度で再生して,対象者の人差し指の腹に付したマークを追跡して軌跡を描画した。本研究はこれらの軌跡から触読する指の動きの特性を定量的に明らかにすることを目的としてデータ収集と解析を行った。 初年度はこれらの一部データを用いて検討した。その結果,読速度が両手,右手,左手全ての読み方において300文字を超えた対象者の片手読み軌跡は左から右への水平な軌跡を示した。一方,読速度の左右差が20%を超える対象者の遅い手による軌跡は垂直方向への上下運動や,読み直しのための逆行運動が頻繁にみられる不規則な軌跡を示していた。また,触読する指の軌跡の周長(軌跡全体の長さ)および上下動(垂直移動範囲)に関して,読速度が100文字未満の対象者は100文字以上200文字未満の対象者と200文字以上の対象者それぞれと比較して,周長が有意に長く,垂直移動範囲が有意に広いことが明らかとなった。 以上は初年度に得られた結果の一部である。本研究で用いた触読指軌跡の記録・描画方法により,触読指の詳細な動きを記録することができ,新たな視点から触読効率を高める可能性が期待される。
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