研究課題/領域番号 |
17K18644
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
中坪 史典 広島大学, 教育学研究科, 准教授 (10259715)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | フォト・エスノグラフィー / ヴィジュアル・エスノグラフィー / 実践者との対話 / 子どもの経験の記述 / 多声的な声 / 実践知 / フォト・ボイス |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、写真を介して研究者と実践者が対話し、相互に解釈し、省察的に検討することで、子どもの経験を描き出すための新たな質的研究方法論、フォト・エスノグラフィーの開発を試みることである。当該年度における研究実績の概要は、次の通りである。(1)広島大学附属幼稚園、東広島市立八本松中央幼稚園、東広島市立御薗宇幼稚園、かえで幼稚園(広島県廿日市市)をフィールドとし、子どもの経験を記述するためのフォト・ストーリーを作成した。具体的には、日本の文化的特徴を映し出した子どもの活動に焦点を当て、彼(女)らの活動の様子を記した数枚のスライドショーを作成した。(2)米国マサチューセッツ州、ミネソタ州、テネシー州の幼児教育施設をフィールドとし、子どもの経験を記述するためのフォト・ストーリーを作成した。具体的には、日本ではあまり見ないような、米国の文化的特徴を映し出した子どもの活動に焦点を当て、彼(女)らの活動の様子を記した数枚のスライドショーを作成した。(3)作成しフォト・ストーリーを用いて、実践者との対話を試験的に試みた。その結果、撮影された写真を刺激媒体として研究者と実践者の異なる見方が響き合い、多様なナラティヴが生成されることが分かった。その際、特に日本と米国という文化の異なるフォト・ストーリーを用いたことで、日本や米国の背後に潜在する暗黙的価値や文化的慣習を浮き彫りにするような保育者の実践知(Practical Content Knowledge)が紡ぎ出される可能性があることが分かった。また、写真の場合、映像を用いた対話とは異なる、保育者の実践知が紡ぎ出される可能性があることも分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の進捗状況について、自己点検による評価の理由は、次の通りである。(1)上記の通り、当該年度は、実際に日本の幼児教育施設においてフィールドワークを行い、子どもの経験を記述し、実践者と対話するために用いる小規模のフォト・ストーリーを作成した。同様に、米国の幼児教育施設においてもフィールドワークを行い、子どもの経験を記述し、実践者と対話するために用いる小規模のフォト・ストーリーを作成した。(2)作成した日米のフォト・ストーリーを媒介として、日本、米国の保育者と対話し、彼(女)らのナラティヴを収集した。(3)2018年6月に開催された日本教育方法学会研究集会(大阪教育大学)、2018年9月に開催された国際幼児教育学会(福山市立大学)、2018年11月に開催された日本質的心理学会(名桜大学)において。当初の予定通り発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は、次の通りである。(1)今年度、広島大学附属幼稚園、東広島市立八本松中央幼稚園、東広島市立御薗宇幼稚園、かえで幼稚園(広島県廿日市市)、米国マサチューセッツ州、ミネソタ州、テネシー州の幼児教育施設をフィールドとし、前年度までに作成したフォト・ストーリーを用いて、各園の実践者と対話する。(2)対話の様子をICレコーダーに録音し、保育者の実践知について検討する。その際、SCAT、うえの式データ分析法など、質的データ分析法を用いる。(3)フォト・エスノグラフィーを刺激媒体とし、対話を通して収集・分析した保育者の実践知について、2019年9月に開催される日本質的心理学会(明治学院大学)で発表を予定する。(4)上記の研究成果を論文化し、学術雑誌に投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度、実践者との対話の逐語録を作成するする予定であったが、対話の実施が予定よりも多く発生したことなどから、作成が保留となってしまい、その結果未使用額が生じることとなった。このため逐語録の作成を2019度に行うこととし、未使用額はその経費に充てることとしたい。
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