研究課題/領域番号 |
17K18658
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
河合 孝尚 長崎大学, 研究推進戦略本部, 戦略職員 (40570792)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 研究倫理教育 / 不正のトライアングル / 不正リスク |
研究実績の概要 |
本研究は科学者の不正リスク(動機・機会・正当化)要因の発生メカニズムを解明し、不正行為に対する抑止力を向上させることで不正行為を未然に防止することが出来るのではないかと着想し、そのための新たな倫理教育プログラムの開発を行うことを目的としている。 平成29年度では、過去に行われた不正行為に関する事例や関係法令等を分析することで、不正行為に及んだ原因や問題点等を明らかにし、科学者の不正リスク要因を特定するための過去の不正行為に関する事例分析を主に行った。国内での研究不正行為に関する事例報告は情報が乏しく件数が少ないので、本研究では主に海外の研究不正行為事例を調査した。調査したのはアメリカ国立科学財団(NSF)の調査報告書2754件、アメリカ研究公正局(ORI)報告書102件、web上の研究不正事例に関する情報65件であるが、本研究で扱うデータとしてはデータの信頼性を考慮してORIの研究不正行為に関する報告書の情報102件を分析対象とすることとした。 本研究ではORIの研究不正行為に関する報告102件を対象に変量解析を行った。ORI報告書から読み取れた項目として性別(女35件、男63件、欠測4件)、職種(教授7件、准教授24件、研究員22件、ポスドク20件、大学院生16件、その他9件、不明4件)、不正行為の種類(改ざん11件、ねつ造39件、盗用94件、重複あり)、所属施設(大学49件、病院14件、研究センター7件、企業1件、不明1件)について二変量解析を行い、それぞれの項目間の関連を検討した結果、特に項目間に関連は認められなかった。つまり研究不正行為は職種や性別等に関係せず誰でも起こす可能性があり、外的な要因ではなく心理的要因等の内的要因が大きく影響していると考えられることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度は「過去の不正行為に関する事例分析」のほかに、「科学者の不正行為に関する行動分析」の中で科学者の不正行為に関する行動実験を行う予定であったが、研究を行うにあたっての倫理上の問題があり、行動実験を行うことが困難となった。 今後は科学者の不正行為に関する行動分析として、科学者への質問票による不正行為に関する意識調査等を行うなどして不正行為についてどれだけ意識しているのか調査し分析する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度では、科学者への質問票による不正行為に関する意識調査を行い、調査結果を分析し研究不正行為に関する不正行為予測シミュレーション解析と効果的な倫理教育プログラムの開発を行う予定である。 不正行為に関する研究は、事例検証など‘事後’に行われることが多い。しかし不正行為を防止するには不正行為を予測し‘事前’に対策や教育等を施すことが有効である。そこで分析結果から特定した不正リスク要因についてLotka-Volterra モデル等の数理シミュレーション解析を行い、科学者が持つ不正リスクによる不正行為の発生メカニズムを解明する。 効果的な倫理教育プログラムの開発では、シミュレーション解析結果と不正リスクに関する教育事例調査から特定した教育要素を基に、不正行為に対する抑止力を向上させる倫理教育プログラム(教育手法や学習項目等)を開発する。
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次年度使用額が生じた理由 |
科学者の不正行為に関する行動実験を行う予定であったが、倫理上の問題により行うことが困難となり実施しなかったため未使用額が生じた。 その代替案として科学者への質問票による不正行為に関する意識調査を行うことを計画し、翌年度ではこの意識調査を行う費用として意識調査票の作成費用やデータ収集のためのシステム作成費等に未使用額を使用することとした。
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