研究課題/領域番号 |
17K18661
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研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
服部 敬子 京都府立大学, 公共政策学部, 教授 (70324275)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 幼児期 / 親密性 / 友達関係 / 支配的関係 / 指導方法 |
研究実績の概要 |
今年度は、1)「親密に見える支配的関係」が保育者にどのように認知されているか、クラス年齢による特徴や昨年度からの継続性を明らかにする、2)支配的な関係を崩して対等な関係を構築していく過程と方法について、参与観察と担任からの聴き取り調査によって明らかにすることを目的とした。 2018年8月なかば~9月上旬にアンケート追跡調査を行い、現在のクラスで「よく一緒にいるが楽しいか疑問」「ボス的な子ども-従属的な関係)」の数、具体的なエピソード、対応方法等について公立・民間園の保育士延べ515名(回収率82.3%)から回答を得て、うち2歳児~5歳児クラス、幼児混合クラスの担任、延べ305名分を分析。 昨年第1回調査時に「支配的な関係」が「ある」と回答されたクラスの割合をクラス(年齢)間で比較すると有意差が認められ、2歳児クラスで有意に少なく、5歳児クラスで有意に多かった。第2回調査で第1回調査からの追跡結果が得られたクラスの中で、関係の変化をみたところ、3歳児クラスまでは関係が解消あるいは新たに出現する割合が高く、3歳児以降では「支配」関係が継続する割合が高いとみられる。 これらの関係を認知している保育士の対応・手応え(a.様子を見る、b.働きかけたが変化なし、c.方法がわからない、d.働きかけている)について、2回分の回答を合計してクラス年齢別で割合を比較したところ、「様子を見る」が3歳児クラスと「幼児混合」クラスで有意に多く、5歳児クラスで有意に少ないこと、「働きかけたが変化なし」が5歳児クラスで有意に多いことがわかった。 2園の5歳児クラスで参与観察と聴き取りを行った記録より、乱暴や威圧的な言動で周りの子どもたちから避けられる傾向があった子どもが、グループ替えと盛り上がった遊びをきっかけに対等な関係を築き、話し合いで双方の思いをぶつけ合うことが大きく変化していくことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
自身の公務が激増したことと保育士不足の影響により保育園への訪問日や複数園の打ち合わせ調整が難しく、初年度の遅れを取り戻すことができなかったこと、及び、被災状況を考慮して協力依頼を控えたことによる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、幼児期における「ボス的な子ども」に対する指導実践(先行研究)の収集と分析を行う。また、協力が得られる園において参与観察及び保育者とのカンファレンスを行い、「親密にみえる支配関係」を対等平等な関係へと発展させていく指導実践のもとで、子どもどうしの関係がどのように変化するかを、エピソード記述の分析を通して明らかにする。研究会を通じた指導方法の提案と実践の展開過程における形成的評価を行う。最終年度として、外部講師を交えたカンファレンスと公開シンポジウムを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
自身の公務が激増したことと保育士不足の影響により保育園への訪問日や複数園の打ち合わせ調整が難しく、予定回数に満たなかったこと、大雨による交通機関の停滞(東京・7月)や被災地(広島、北大阪)への訪問見合わせにより、旅費や外部講師の招聘、シンポの開催ができなかったことによる。 次年度は当初の予定通り、広島、大阪、関東地区での研究会にも参加して事例の収集を行い、学会及び公開シンポジウムで研究成果を報告する。
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