研究課題/領域番号 |
17K18662
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研究機関 | 岡山県立大学 |
研究代表者 |
吉永 早苗 岡山県立大学, 保健福祉学部, 教授 (80200765)
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研究分担者 |
下郡 啓夫 函館工業高等専門学校, 一般理数系, 教授 (00636392)
小松 正史 京都精華大学, 人文学部, 教授 (40340509)
高橋 幸子 岡山県立大学, 保健福祉学部, 教授 (50299244)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | ディクトグロス / 幼児 / 環境音 |
研究実績の概要 |
本研究を遂行するためのパイロット調査を行なった。4種類の環境音を用いた2つの刺激音声を作成し,5歳児(年長児)を対象とした調査を行うとともに,その評価の方法の検討と妥当性の検証を行った。分析は,当該児の「比較・分類力」,「因果関係判断力」,「仮説・確認力」,「人との関わり」等の評価指標の観察尺度における実態を明らかにすること目的とした。 刺激音には,4種類の関連する環境音が順に示される2つの課題(①「海」,②「夕方の学校」)を制作した。①は,波音→ウミネコ→海水浴→漁船,②は,公園での野外遊び→チャイム→『ゆうやけこやけ』の放送→カラスで構成し,提示時間はいずれも2分。協力児は5歳児24名(男児6人,女児18人)で,3名ずつの8グループが主体的に参加した。参加児には,自閉傾向,多動傾向があるとされる幼児が含まれる。園内の静かな一室において2017年秋に実施し,課題は①→②の順にCDレコーダーから提示した。一連の刺激音の聴取後,提示順などについてグループ内で交わされた会話内容を録音し,音楽教育,音専門家,英語教育,数学等の異なる分野の評価者が,録画された映像を確認し,8グループ各々を評価した。 子どもたちは刺激音を相談しながら順に回答し,他者の意見に「確かに」「あ,ほんとだ」と共感したり,あるいは「ぼくはウッキッキーとは聞こえなかった」と異なる意見を発言したりする等,人と関わる中で考えることができている。また,海の音から「無人島の犬」「溺れた」を、「台風」の発想から災害を連想した回答をする等,分類,因果関係,仮説確認力などが育ちつつあることが窺えた。評価指標の信頼性を検討したところ,課題①の評価では信頼性が不十分であり,刺激音の修正のみならず評価者間での評価ポイントの擦り合わせ等が今後の課題であると考えられた。一方で,課題②の評価は十分な信頼性が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究について、幼児を対象としたパイロット調査を実施した。その評価の指標について検討し、本調査に向けての準備を行うことができた。しかしながら,研究代表者の所属異動があり,調査協力の小学校・園との調整が滞っている。
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今後の研究の推進方策 |
29年度の調査結果を踏まえ,環境音に加え,音楽の分析的聴取課題としての刺激音声を複数種類制作する(30年度前期)。30年度後期には,5歳児および小学校低学年に調査協力を依頼し,一定期間において,その聴取とディクトグロスのプログラムを実施してもらう。一方,小学校低学年を対象としたリーディングスキルテストを30年度前期に作成し,30年度後期にそのパロット調査を実施する。評価指標については,29年度の結果からの再検討を試みる。大学生に協力を依頼し,評価者の母数を増やした上での信頼性を検討していく。 調査結果は,発達心理学会,保育学会,音楽学習学会,環太平洋乳幼児教育学会(国際学会)等において速やかに発表するとともに,論文の準備を行って行く。 また,年に5回程度の研究会を開催して研究の進展を図る。研究会には必要に応じて,幼児教育・小学校教育の実践者を招聘し,調査の手順や評価指標の検討について協力を仰ぐ。実践に即した音楽鑑賞におけるアクティブラーニングプログラムの開発も並行して行なっていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
29年度は提示音声を環境音の課題で行ったため、高機能シンセサイザーの購入を30年度とする。
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