研究課題/領域番号 |
17K18662
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研究機関 | 東京家政学院大学 |
研究代表者 |
吉永 早苗 東京家政学院大学, 現代生活学部, 教授 (80200765)
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研究分担者 |
下郡 啓夫 函館工業高等専門学校, 一般理数系, 教授 (00636392)
小松 正史 京都精華大学, 人文学部, 教授 (40340509)
高橋 幸子 岡山県立大学, 保健福祉学部, 教授 (50299244)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 分析的聴取 / リーディングスキル / 環境音 / 音楽の属性の変化 / ディクトグロス / リーディングスキルテスト / 気づき |
研究実績の概要 |
(1)2017年度に5歳児を対象に実施した,「海」および「夕方の学校」をテーマとした4つの環境音で構成される課題を7歳児において実施した。7歳児にも同様に,音の提示順序および連想される風景を回答するよう指示し, 少人数のグループでディクトグロスすることを求め, それぞれのグループの会話をICレコーダーに録音した。5歳児と7歳児を比較した結果, ①多くの5歳児において「時系列でものごと捉えたり,順序性を考えたりする」ことや「可逆的操作を使って結果から原因に遡って理由づけたり,因果関係を捉えたりする」こと,さらに「予想したりイメージを広げたりして考える」ことが身に付いており,小学校に入りそれは精度を増す。②7歳児は正解だけを述べる児童が多くいる一方, その情景を詩的あるいは詳細に表現する児童もいた。 (2)7歳児のリーディングスキルが,短い課題曲を分析的に聴取する体験を重ねることによって向上するかどうかを確認することを目的とした調査を行なった。課題曲には、児童にとって馴染みのある童謡『ちょうちょう』を使用し小学校2年生において既習の音楽の属性(音色・大小・テンポ・高低・調性・奏法)を1回あるいは2回変化させた課題を制作した。リーディングスキルテストには, 小学校2年生用『国語読解力全国標準テスト』(受験研究社)を協力児童全員に配布し,その第104番目の課題を使用した。 実験群及び統制群において,まずリーディングスキルテストを行なった。翌週より,朝学(授業前の20分のクラス活動の時間)において8回の課題曲聴取とそのディクトグロスを行い,その翌週に2回目のリーディングスキルテストを実施した。 その結果, 短い課題曲の分析的聴取する介入効果は, リーディングスキルテスト成績の向上に現れなかったと言わざるを得ないが, テストの回答への安定性に寄与した可能性があることが見出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調査研究については、おおむね順調に進展している。 7歳児(小学校2年生)に用意した音楽の聴取課題は、小学校音楽教師との検討の上で制作したが、予想外に児童にとって平易であったため、実施の途中で児童に飽きが生じてしまった。加えて、リーディングスキルテストに使用した『国語読解力全国標準テスト』も平易であったため、天井効果が生じてしまった。そのため、本年度の結果については、論文執筆までに至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策は次の3点である。 ①課題曲の見直し:変化が単純であったため回数を重ねる中で集中力が低下した。変化のパターンを複雑にすることで課題の難度を上げる。また, メロディーの音楽的特徴を変化させるだけでなく, メロディーに別の環境音を付加することを考えている。その内容は, 抽象度の高いものをまず加え, その後, 抽象度の低い音を加えることで, 抽象度の高い音についての類推を求めたい。 ②リーディングスキルテストの見直し:『国語読解力全国標準テスト』の問題が容易であったため,本研究が目的として挙げているリーディングスキルテストを開発中である。本調査の終了時に,本来目的としているリーディングテストのサンプル版を実施した.その結果,問題の設定を変えることによって,回答の状況が大きく変わった.この変化が問題の提示方法の難しさによるものなのか,音の介入によるものなのかを明らかにしていく。 ③聴取課題曲に関する気づきの状態及びその表現とリーディングスキルに相関があるのかということについて,個別のデータを回収することによって,その関係を明らかにする。 5歳児と7歳児の音楽の分析的聴取の状況とリーディングスキルの関係に関する比較調査:課題曲とリーディングスキルテストの見直しを行い,5歳児においても同様に課題曲の分析的聴取を実施する。この時,リーディングスキルテストに相当するものとして,論理的思考力の測定のための, 5歳児にふさわしい方法を検討したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査処理データの天井効果があったため、その詳細な分析に至らず、分析用ソフトの購入を見送った。2019年度購入予定である。また、研究代表者の所属異動があり、研究環境整備に手間取ったためPC等の機器に関し新規購入に至らなかった。データ分析及び論文作成のために大型画面のPC及びA3プリンターを購入の予定である。
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