研究実績の概要 |
2018度の結果を受け,聴取課題とリーディングスキルテストを改善した。 聴取課題には2018年と同様に,児童にとって馴染みのある童謡『ちょうちょう』を使用し,メロディーに, 小学校2年生において既習の音楽の属性(音色,調性,演奏法,高低)を変化させた4課題と,途中から環境音を重ねる課題を制作した。環境音課題では, 各課題に対し2種類の音を順に重ね,児童がその音の風景を想像しながら聴取し,ディクトグロスに取り組むことを期待した。 リーディングスキルテストは,オリジナルのテストを考案した。内容は,①文章に当てはまるオノマトペを選択する,②ホットケーキ作りの文章と,別枠に示された材料から,調理手順を問う問題に答える,③「くまのプーさん」についての説明文を読み取り問いに答えるものである。 公立小学校2校の協力を得て実施した結果,リーディングスキルテストのクラスの平均得点は,どの項目においても同じあるいは上昇していること,また,課題曲に対する気づきの記述量の増加,関連付けや連想が膨らんでいる記述が多くあった。 調査を通して以下のことが明らかになった。①多くの5歳児に,「時系列でものごとを捉えたり,順序性を考えたりする」ことや,「可逆的操作を使って結果から原因に遡って理由づけたり,因果関係を捉えたりする」こと,さらに「予想したりイメージを広げたりして考える」ことが身に付いていること,そして小学校に入り,それは精度を増す。②直接体験における音風景のインプットは,論理的思考を促すディクトグロスによって,未体験な音風景への想像と音の想起をもたらす。③音楽の分析的聴取の経験が,リーディングスキルに影響を及ぼすのではないかということが示唆された。④音楽の分析的聴取における「注意深く聴く」経験が日常生活における気づきに影響を及ぼし,ディクトグロスの経験は,状況を表現する言語の豊かさにつながった。
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