研究課題/領域番号 |
17K18667
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研究機関 | 桜美林大学 |
研究代表者 |
山口 裕貴 桜美林大学, 総合科学系, 准教授 (50465811)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 学校体育事故 / 注意義務 / 教職実践演習 / 裁判例 |
研究実績の概要 |
文部科学省の挙げる教職実践演習の授業で取り扱う内容・方法例11項目のうち、②の「子どもに対する責任」の部分、⑤の「学級経営案の作成」の部分、⑥の学校現場の見学・調査、⑧および⑩の「教科内容等の指導力」の部分、⑨の模擬授業の部分に該当する具体的なカリキュラム内容の編成・精査と学生の理解を促す簡略な自習用テキストノートの作成準備を行った。その中でも特に平成29年度は、学校体育事故論における安全配慮義務・方法論について裁判例の検討・分析を行った。その他、広く教員の負担する注意義務についても保育所の事故を参考に検討した。 水泳での飛び込み事故を例に、教員の注意義務につき、その法的判断の鍵となる要素を検討した。「最初の授業での飛び込み」(指導計画の問題)、「とおりいっぺんの説明」(指導方法の問題)、「軽信」「漫然」、「体格、技術の正確な把握」(事故回避のための措置の問題)、「監視態勢」「救護態勢」(監視体制の問題)、「応急措置」(事後措置の問題)である。質の高い教員の下で正しく飛び込みを学習できればよいが、その指導に長けた教員が現実的にどれほどいるか。また、子どもたちは全員が正しく安全な角度で飛び込むことができるのか。例年、学校の水泳授業(水泳部活動を含む)では、飛び込みスタートで数名の子どもが後遺障害を負う事故に遭っている。教員の指導技術がどれほど高くても、学習者である子どもたちは発達途上にある未熟な存在である。ときとして誤って下方に突っ込んでしまうことがあることは容易に想像できる。また、学校のプールは溺水防止のため浅めに設計されており、多くは中央部分が最も深く、スタート位置付近が最も浅くなっている。飛び込みスタートによって入水したまさにその場所が最も浅いことになる。こうした構造上の問題にも十分に目を向け、事故の防止に努めることもまた教員の責務である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
学校体育事故に係る多くの文献に当たり、多くの裁判例を分析する中で、それぞれの裁判例における共有点と相違点を洗い出し、何が教員の安全配慮義務(注意義務)違反に該当し、何が該当するか否かの判断が難しいのかについての考察が進んでいる。 教員はやはり、何をおいても児童生徒の生命・身体の安全を確保しなければならないことは自明であり、かつ、学校運営を担う校長その他の管理職にある者は、常に学校の施設等に目を配り、危険の早期発見と早期改善の行動力が求められてくることもまた自明である。その目配りの徹底についてもやはり限界があろうが、最大限の努力、つまりその行動努力が社会通念上相当と認められる程度のものであったか否かが論点・争点となるのではないだろうか。具体的には、教職員や施設利用者からの情報提供を受け付ける窓口の顕在化と機能化である。月2回程度、窓口に寄せられた施設等の欠陥に関する情報を検証する会議をもつことや、施設・設備業者の専門的意見を求めることを適切に行っており、その質と量が社会通念に適うものであれば、被害にあった児童生徒やその家族の心情もどうにか収まりがつくというものである。学校体育事故の法的責任論に関しては、なにより社会通念を鏡とした検討が肝要であると考えられる。 以上のことから、教員ならびに教員をめざす者は、判旨を読み、裁判官の解釈を十分に理解したうえで、自身の経験に照らして熟考すべきであることを改めて認識した。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は損害賠償論についてのカリキュラム編成とテキストノート作成を行う予定である。勤務校での教職実践演習の授業内で、質問紙調査やインタビュー調査により、教職実践演習受講者の有する「学校体育事故」への関心や理解を把握し、それを精査したうえで、一層の安全配慮意識の向上を促す具体的なカリキュラム内容およびその運用方法を適宜案出する。学校体育事故、すなわち「学校安全」の領域が教職課程を履修する大学生にどういったイメージで理解されているかについてより多くの大学生の意識調査を積極的に敢行していく。専門性の高い弁護士にも連絡をとり裁判例の解釈などについてヒアリングしていきたい。その成果を随時、学会や研究会などで発表・投稿し、社会還元を図っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度は研究の下準備として基礎資料の読み込みと有名裁判例の精査に当てたため支出をしなかった。研究期間満了までに、教職実践演習で活用する学校体育事故関連のテキストノートを出版すべく支出を抑えている面もある(本研究費での出版となる予定)。そのための原稿作成を今後鋭意取り組んでいく。
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