発達障害の有病率は年々増加しており,中でも自閉スペクトラム症の有病率は非常に高い.発達障害は脳の機能障害であるが,早期からの介入によりその予後は大きく変化する.科学的根拠に基づく支援方法を保護者に教授し保護者が家庭で支援を行う保護者トレーニングは,非常に効果的で効率的であることが数多くの研究で示されてきたが,これまでの保護者トレーニングは,時間的・地理的・経済的制限が大きいことが課題とされてきた.そこで本研究では,これまでの制限を超えて広く保護者トレーニングを提供するため,テレヘルスシステムを用いて保護者トレーニングを行う支援プログラムを開発・実施し,その効果を検証した. 本研究は次の2つの介入実験で構成した:<実験1>保護者トレーニングを実施できる専門家の育成を目的とした「早期発達支援エキスパートの育成研修」,<実験2>早期発達支援エキスパートが保護者トレーニングを実施しその効果を検討する「テレヘルス保護者トレーニング」.実験1では,児童発達支援事業所に勤務する保育士に,対面式講義とテレヘルスでのビデオフィードバックからなる研修を実施した.実験2では,自閉スペクトラム症児の保護者に,アプリと講義ビデオがインストールされたタブレットを貸与し自己学習していただいた後,テレヘルスでコンサルテーションを実施した. 介入の結果,実験1では複数回のビデオフィードバックの後,参加者の支援技術が向上したことが示された.実験2では,保護者の介入技術が向上し,子どもの発達月齢および言語発達が促進されたことが示されたことに加え,プログラムの継続可能性,運用可能性の高さが示された.
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