研究実績の概要 |
船舶運航に関する学問の内,操船者の技量に関わる操船学では,講義の他,操船シミュレータや実船などの体験教材を用いた授業が行われる。本研究では体験教材による学習訓練効果の向上を目的とし,操船者の視点を鳥瞰視点や俯瞰視点に変えた操船訓練が教育上、安全上有効であるか効果を検証した。また,実船において操船視点位置を変更する手段としてUAVを用いた操船支援機能を検証し, 船上におけるUAV使用の問題点を明らかにした。 操船経験の少ない学生は,時定数が非常に大きい船の特徴を把捉し難く,操船行動の完了を待たずに必要以上に操作量を追加し,船体の姿勢制御が不可能な状態に陥ることが多い。また,大型船では死角が大きく,障害物の把握や目測が困難であるため,適切な操作タイミングが計りづらい。そこで、船橋内からの一人称視点だけではなく、鳥瞰視点もしくは船体後方からの俯瞰視点映像を利用した操船がどれほど有効であるのかを操船シミュレータ及び実船で検証した。 操船シミュレータによる操船実験(8,000TEU型コンテナ船で浦賀水道航路入口から中ノ瀬航路出口まで)の結果から、10名の学生全て一人称視点より鳥瞰視点もしくは俯瞰視点での操船結果の方が安全に操船していた。また、有資格者での操船結果において、より安全に操船するためには俯瞰視点での操船が良いとうことが示唆された。 鳥瞰視点や俯瞰視点による操船は、周辺の情報(他船との見合い関係、可航水域の把握)や自船運動の様子が把握しやすいので、操船経験が少ない学生でも、一人称視点より安全に操船出来る傾向が伺えた。つまり、自船周りの映像を船橋内で提示することは操船支援情報をとして機能することがわかる。一方で、操船訓練や航行の安全性検証などにおいて、鳥瞰視点や俯瞰視点のみで実施、評価することは、注意を要すると言える。
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