研究課題/領域番号 |
17K18694
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岡ノ谷 一夫 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (30211121)
|
研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
|
キーワード | ラット / 迷路 / メタ認知 / 見本合わせ / 触覚 / 遅延 / オペラント条件づけ / 電気生理学 |
研究実績の概要 |
本研究は、これまでラットを対象に主にレバー押しやノーズポークによる自由オペラント場面で進められてきた動物メタ認知研究を、ラットにとってより自然である日の字型迷路を活用した触覚見本合わせ課題で実現させることを目指す。これにより、ラットの訓練期間の大幅な節約(6ヶ月から2ヶ月へ)と、脳神経細胞の記録との両立を可能にする。 平成29年度においては、ラットの日の字型迷路の作成と改良に時間を費やした。当初、2つの選択肢のうちどちらかを選び正解した時点で餌報酬を与えていたが、その方法だと報酬を与えられた場所に固執し試行を進められないことがわかった。そのため、装置を改良し、試行開始場所に戻って始めて強化を与える方法にしたところ、ラットは試行を進めることができるようになった。また、床の感触が弁別刺激であることに気づかせるため、当初の床をより明瞭な触覚的差異をもった床に張り替えた。また、迷路の脇からラットが脱走しないように、壁を高くした。 これらの改良の甲斐があって、平成29年度末の時点で一匹のラットを床の触覚の2肢強制選択課題により訓練し、90%以上の正答率を挙げることに成功している。これが存在証明となり、さらに多くのラットに触覚見本合わせを訓練しているところである。 本研究課題は、ラットにおける触覚の見本合わせを成功させた時点ですでに高い新規性を持っており、この時点までの結果をまとめて最初の論文を作成する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究所年度に装置の開発が完了し、遅延見本合わせの訓練に成功したことから、本研究は順調に進展していると評価することができる。
|
今後の研究の推進方策 |
平成30年度には、触覚見本合わせ課題を6匹のラットにおいて訓練する。成績が90%を超えた個体について、見本刺激から選択刺激に以降する段階で走路に留め置く遅延操作を導入する。この遅延操作後、もしラットが見本刺激に戻っていく行動が観察されたなら、これをメタ認知の指標として扱うことができる。ここまで訓練が進んだならば、前頭前野部分に局所電場電位計測用の電極を埋め込み、遅延を受けている際の電場電位および見本刺激確認直前の電場電位を計測し、メタ認知行動との比較を行う。このことで、ラットメタ認知研究を画期的に推進し、さらに電気生理学的研究との対応を見るという本研究の目的を達成する。
|
備考 |
本研究は装置の作成から開始したため現時点では公式な研究発表をしていない。
|