本研究は、これまでラットを対象に主にレバー押しやノーズポーク(鼻つつき)によるオペラント場面で進められてきた動物メタ認知研究を、ラットにとってより自然である日の字型迷路を活用した触覚見本合わせ課題で実現させることを目指す。これにより、ラットの訓練期間の大幅な節約(6ヶ月から2ヶ月へ)と、脳神経細胞の記録との両立を可能にする。 この実験のための装置は、まずスタート走路の感触を覚え、それと同じ感触のある左右いずれかの走路(選択走路)を選ぶようになっていた。29年度に開発した装置では、スタート走路の感触は3通りに変化するが、選択走路の感触は固定であった。このため、ラットが見本合わせを学習したのか、スタート走路の感触に合わせた条件性弁別を学習したのかが区別できなかった。そこで30年度には、スタート走路の感触を6種に増やす共に、選択走路も左右それぞれ6種の感触を提示できるよう改良した。スタート走路と選択走路の間に、感触特徴のない部分が少しあり、そこに至ったラットが改めてスタート走路に戻る行動が観察され、これによってラットのメタ認知が逸話的に示された。 このように、本研究課題は、ラットにおける触覚の見本合わせを成功させ、メタ認知様行動を観察することができた。この点で、当初目的を実現した。今後、ラットのメタ認知様行動をある程度の頻度で起こすような課題パラメータを決めることで実験の効率化を図り、さらに課題推敲中の脳活動を計測する予定である。
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