研究課題/領域番号 |
17K18701
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
鶴田 早織 (塚本早織) 愛知学院大学, 教養部, 講師 (80794073)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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キーワード | 文化 / 規範 / 学習 / 非人間化 / コミュニケーション / 留学生 |
研究実績の概要 |
今年度は、昨年度対面で行った実験の結果をまとめ、再現可能性を追究するためにオンライン上でデータを収集した。具体的には、以下の内容を実施した: 1.文化規範の学習プロセスにおける記憶の役割を探る(オンライン追試) 昨年度、対面で収集したデータは対象を学生に限っていたうえ、参加者数が少なく分散が大きい結果となった。したがって、今回はオンライン上で一般の人々を対象とし、より多くのデータを収集することとし、結果の再現と一般化に努めた。異文化適応に関する態度を測定する尺度を使用し、規範の学習能力との関連を調べた。オンライン実験では、新しい文化で望ましいとされている行動の具体例を呈示し、学習の程度を測定した。また、行動の具体例から規範概念を推測し、他の文脈に応用する能力についても測定することで、異文化適応を促進するために必要となる認知的柔軟性を指摘した。 2.異文化適応の体験と許容における言語コミュニケーション能力の役割について 昨年度に引き続き、留学生の言語コミュニケーション能力に対する自己評価を測定し、内集団である留学生および外集団である留学先の現地学生に対する評価とどのような関連がみられるのかを検証した。内外集団の評価として、「非人間化」の程度を測定し、1)自身の言語コミュニケーションに自信がないほど、2)現地学生の留学生に対する偏見を推測しやすいほど、内集団を非人間化する程度が強いと予測した。本年度は、コロナ禍の影響で新規の留学生が少なくなったことを考慮し、データ収集の方法や対象を見直した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験のスムーズな実施を可能にするために昨年度行った様々な準備(学生アルバイトのトレーニング、実験室実験で使用する材料やプログラムの構築)について、今年度は、新型コロナウイルスの影響で実験室での実験が不可となり、引き継ぐことが難しくなってしまった。実験材料をオンライン上で作動できるよう作り替えたり、分析方法を見直したりする必要があった。ただし、オンライン上で収集したデータによって再現の可能性やさらなる改善点が見つかったため、今後の課題遂行に繋がる1年であったといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度構築したオンライン実験の基盤を活用し、研究を遂行する。規範の学習プロセスについて記憶、学習、態度、精神的健康との関連といった様々な視点から検証を続ける。留学生を対象とした異文化適応と言語コミュニケーション能力の認知に関する研究では、日米両国で募集方法を工夫しながら必要なデータを収集する。文化的価値観の違いによって、言語コミュニケーション能力と偏見(の認知)の関連が異なる可能性を探るため、規範の強さ・弱さ(tightness-loosenss)を各文化で測定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験室での対面実験が不可能となり、アルバイト謝金や参加者謝礼の金額および実験プログラムや材料に費やす経費に余剰が生じたため、次年度使用額が生じた。 今後は、これまで得られた結果を追試する実験を行うために助成金を使用する。具体的には、参加者謝礼や実験アルバイトの報酬に充てる。また、得られた結果を論文としてまとめるにあたり、英文校閲の経費として使用する予定である。さらに、関連する研究に関する最新の知見を収集するために、オンライン学術ジャーナルの購読費用として助成金を使用し、自身の研究の関連領域への貢献を模索する。
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