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2019 年度 実施状況報告書

男子性犯罪受刑者に対する神経生物学的要因を考慮した再犯リスク評価尺度の作成

研究課題

研究課題/領域番号 17K18703
研究機関兵庫教育大学

研究代表者

遊間 義一  兵庫教育大学, 学校教育研究科, 教授 (70406536)

研究分担者 金澤 雄一郎  国際基督教大学, 教養学部, 教授 (50233854)
野田 哲朗  兵庫教育大学, 学校教育研究科, 教授 (00769979)
河原 哲雄  埼玉工業大学, 人間社会学部, 教授 (30251424)
研究期間 (年度) 2017-06-30 – 2021-03-31
キーワード性犯罪受刑者 / 神経生物学的検査
研究実績の概要

本研究により我々が開発した神経生物学的検査である「日本語版アイオワギャンブル課題(以下IGTとする)」について,a)英語版との同等性の検証をするとともに,b)資質的に多様な存在と考えられる性犯罪受刑者の異質性の有無を検証し,c)異質な集団にIGTを実施して異質な集団ごとに介入に対してどのような反応をするのかを検証した。
具体的には,a)については,大学生及び大学院生に対して,英語版IGTと日本語版IGTを無作為に割付けて実施し,先行研究から同等性マージンを70%に設定したうえで,両者の同等性の検証を行い,これを確認した。
b)については,性犯罪受刑者の再犯を予測するに当たって,性犯罪受刑者には知的障害を有する者が一定数おり,彼らは,知的障害を有していない者とは異なった再犯要因・再犯過程を有する可能性があることから,IGT及び同じく神経生物学的検査である視覚聴覚統合課題検査(以下IVAとする)を触法知的障害者に実施し,これらの結果を基に攻撃性の類型化を行い,先行研究で示された一般受刑者とはかなり異なっていることを見いだした。
c)については,触法知的障害者に対する怒りの抑止訓練であるアンガーコントロールトリートメント(以下ACTとする)の逸脱行動に対する効果を検証し,IGTの得点の違いによってACTの効果が異なるとの結果を得た。
また,a)~c)と同時に,刑務所内でIGTを実施できるようにするため,PC版ではなく,カード版のIGTを作成し実施した。刑務所内でIGTを安全に実施するために,PCを使うことができず,IGTの原法と同様トランプのようなカードを用いる必要がある。本年度はこれを作成し,実施マニュアル及び採点表とともに完成させ,現在刑務所で施行中である。
これらの結果を,国内学会で4件,国際学会で2件発表した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

日本語版PC用アイオワギャンブル課題(以下IGTとする)の作成と英語版との同等性の検証,IGTと同様に再犯予測に重要な神経生物学的検査である視覚聴覚統合検査(以下IVAとする)の日本語版の作成を終え,これらを少年鑑別所在所者,触法知的障害者,及び刑務所受刑者に対して実施し,それらの者のIGT及びIVAの特徴,さらにIGTとIVAを用いた質的に異なる者の類型化,類型による違反行為に対する介入効果の違いなどの検証を終えており,研究はおおむね順調に進展していると評価できる。

今後の研究の推進方策

今後の研究としては,次の2つが進行中である。第一は,刑務所受刑者に対して,IGTを実施し,再犯との関係を詳細に検討することである。刑務所内でのIGTの実施については,法務省矯正局及び実施刑務所と協定書を交わしたうえで,すでに実施中である。これによって得られたデータにより,知能,犯罪歴,法務省矯正局が開発した再犯予測ツールによる得点等のデータとIGTの結果を比較検討する。現段階では,新型コロナウイルスの流行の影響もあり,試行的に2つの刑務所でのデータ収集にとどまっているが,調査対象をより多くの刑務所に広げていくことも欠かせない。
第二は,前年度までに行ってきたIGTの結果を再犯予測に正確に反映させるために,再犯に至らずに,再犯の追跡から抜け落ちていく出所受刑者に関する情報を収集し,再犯予測結果の補正を行うことである。具体的には,出所受刑者の出所後の重篤な疾病への罹患や死亡が再犯予測に与える影響をモデル化することである。重篤な疾病への罹患や死亡は,出所受刑者の再犯可能性を0にする重要なイベントである。もし,これらのイベントが比較的多く生じているとすると,これらを考慮しない現行の推定方法は性犯罪再犯の生じる可能性を過小評価してしまっている恐れがある。この点について,これまでの先行研究はほとんど扱っていないので,出所受刑者の健康や死について情報収集をしていくことが本年度の課題である。

次年度使用額が生じた理由

令和2年3月25日から同月27日までの間,米国のニューオリンズで開催される予定であった第13回健康格差学会に参加を予定していたが,新型コロナウイルスの流行により,同学会が開催中止となったため。
本年度は,同学会は開催されないため,受刑者の健康状態に関する情報収集のために,新型コロナウイルスの流行の状況を見極めつつ,他の学会への参加あるいは別の方法での情報収集を行う予定である。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2019

すべて 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件)

  • [学会発表] Aggression Types for Offenders with Intellectual Disabilities and Their Neurodevelopmental Characteristics2019

    • 著者名/発表者名
      Maki Tojo, Yoshikazu Yuma, Yuichiro Kanazawa, Tetsuo Kawahara, Ayaka Oghihara, Shoko Ishida
    • 学会等名
      the 2019 American Society of Criminology Meeting
    • 国際学会
  • [学会発表] Trajectories of IGT Net Scores for Jaspanes college students2019

    • 著者名/発表者名
      Ayaka Oghihara, Yoshikazu Yuma, Yuichiro Kanazawa, Tetsuo Kawahara, Maki Tojo, Shoko Ishida
    • 学会等名
      the 2019 American Society of Criminology Meeting
    • 国際学会
  • [学会発表] PC用日本語版アイオワギャンブル課題の開発と英語版との同等性の検討(2)2019

    • 著者名/発表者名
      遊間義一,金澤雄一郎,河原哲雄,東條真希,石田祥子
    • 学会等名
      日本犯罪心理学会第57回大会
  • [学会発表] 神経心理学的検査を用いた犯罪・触法知的障害者の攻撃性の類型と各類型の特徴2019

    • 著者名/発表者名
      東條真希,遊間義一,金澤雄一郎,河原哲雄,石田祥子
    • 学会等名
      日本犯罪心理学会第57回大会
  • [学会発表] 触法知的障害者の逸脱行動への前頭葉の機能とACTの交互作用2019

    • 著者名/発表者名
      石田祥子,遊間義一,金澤雄一郎,河原哲雄,東條真希
    • 学会等名
      日本犯罪心理学会第57回大会
  • [学会発表] アイオワギャンブル課題を用いた非行少年の意思決定における特徴の検討2019

    • 著者名/発表者名
      仲里雄希,馬場中臣,遊間義一,金澤雄一郎,河原哲雄,東條真希,石田祥子
    • 学会等名
      日本犯罪心理学会第57回大会

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公開日: 2021-01-27  

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