研究実績の概要 |
乳児期は、明らかに成人期とは異質の睡眠・覚醒リズムを持つ新生児期と、成人期の睡眠・覚醒リズムに類似する幼児期との中間にあたる時期であり、両者の睡眠・覚醒リズムの移行期といえる。しかし,これまでの研究では乳児期後半以降における検討が多く、乳児期前半の睡眠・覚醒リズムと発達予後とを検討したものは少ない。そこで本研究では,睡眠・覚醒リズムの形成段階にある月齢3か月から6か月にかけて, 睡眠と,感覚運動機能や気質の関連を明らかにするための縦断研究を行った。 研究対象者は,小児科外来およびスイミング教室で同意を得た30名で, そのうち在胎週数が37週未満であった1名を分析対象から除外した (総数: 29, 男児: 17, 女児: 12)。睡眠は加速度センサー(アクチグラフ)を用いて調べ,感覚運動機能と気質は質問紙によって調べた。 その結果,月齢4か月では昼間の睡眠が月齢6か月の一部の感覚運動機能と正の関係, 昼間の覚醒が負の関係にあった。一方,月齢6か月では夜間の睡眠が寝返りの良い結果と, 昼間の睡眠が悪い結果と関連していた。また気質については,月齢4か月において,昼間の睡眠時間が長いほど,なだめやすいという結果であった。 以上より,月齢6か月時点では成人と同様の、夜によく寝て日中は覚醒しているという睡眠・覚醒リズムが感覚運動機能の良好な発達と関連すると言えるが,月齢4か月のような乳児期前半では逆に、成人と同様の睡眠・覚醒リズムは必ずしも発達に良い影響を及ぼす睡眠であるとは言えず、むしろ、まだリズムができていないことが良好な発達であると言えるかもしれない。
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