子どもの睡眠は発達に伴い、成熟した理想的な睡眠,つまり夜間に覚醒回数が少なく十分な睡眠がとれるように変化することが示されてきたが,その多くは12か月齢以上の児を対象とした知見であった。一方,我々が行った、乳児の睡眠と気質(temperament)との関連を調べるための縦断研究では,生後4か月,6か月の自己制御機能に関連する気質質問紙の得点は,夜間の睡眠時間が少ない児で高くなり,夜間の睡眠中の体動や覚醒回数の多い児の方が良好な発達を示すという結果を得た。これらの一見矛盾する結果から我々は,乳児期前半と後半以降の児においては,脳の発達や発達予後に良い影響を与える睡眠状態が異なるのではないかという仮説をたてた。 そこで、35名の乳児を対象に、加速度センサー(アクチグラフ、米国A.M.I.社)を用い、発達の指標として運動機能を調べながら月齢3か月から24か月までの縦断研究を行った。運動機能の質問項目は乳幼児の発達臨床に詳しい療育機関医師らが作成した。気質質問紙はIBQ-R日本版、ECBQ日本版を用いた。なお本研究は名古屋市立大学研究倫理委員会の承認を得て行われた(No.17011)。 その結果、月齢6か月時点では成人と同様の,夜によく寝て日中は覚醒しているという睡眠・覚醒リズムが感覚運動機能の良好な発達と関連すると言えるが,乳児期前半では,むしろ夜間に長く眠らず、睡眠と覚醒を繰り返すというような,まだリズムができていないことが良好な発達であると言えるのではないかと考えられた。
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