研究課題/領域番号 |
17K18713
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
坂上 貴之 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (90146720)
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研究分担者 |
丹野 貴行 明星大学, 心理学部, 助教 (10737315)
藤巻 峻 慶應義塾大学, 文学部(日吉), 講師(非常勤) (80811421)
井垣 竹晴 流通経済大学, 流通情報学部, 教授 (30434426)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | ヒトの強化スケジュール / Web実験 / ゲーム事態 |
研究実績の概要 |
研究費の決定後に、(1)ヒトでの強化スケジュール実施にふさわしいプログラムの開発と、(2)そのプログラムを実際に走らせ、データを収集する実験用サーバーの構築に着手した。
(1)については、1回あたり30分、計6回の実験セッションに参加して、比較的飽きがこない柔軟性に富んだゲームプログラムの作成を目的として開発を行った。その結果、実際の実験で用いる予定のプログラムをProcessingによって2本書き上げ、そのうちの一本については、すでにサーバーに搭載すべく、Processing.jsなどを利用してJavaScriptに変換し、ある程度の予備実験が可能な状況までに仕上げた。また、研究者全員によって、細部にわたって問題点を検討した。 (2)については、実験用サーバーの構築のためのクラウドサーバーをレンタルし、その運用を開始した。そして被験者の登録、説明付き同意や実験概要の掲示、実験への参加の記録、謝金の支払いの自動化など、実際に実験が行われる場合に最低限必要な様々なモジュールの組み込みを行った。こうした実験プログラムの開発とそれを搭載する実験用サーバーの構築まで進んだ後、現段階では、実験プログラムの最終仕様として、1回のセッション30分内に3つのタイプの強化スケジュール、a)VRスケジュール、b)VRに連結したVIスケジュール、c)同じ強化率のFIスケジュール、を走らせ、データをとることを決定し、研究分担者を中心として予備実験を開始し、同時に実験プログラムの精査を行っている。また、すべての行動記録と関連する刺激変化の記録をサーバー上に残すような工夫を施している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度は、まず報酬スケジュールを実装した実験プログラムの試作品の開発を繰り返し行った。試作品については、簡単な予備実験を行い、動物実験の結果の再現可能性に加えて、主観的な面白さや自発的参加の継続性などの観点から評価した。そして現在までに2つの実験プログラムを完成させ、さらにいくつかの実験プログラムの開発にも取り組んでいる。当初は、作成した実験プログラムを用いて、動物で報告されてきた代表的ないくつかの現象を再現できるかどうかを検証するという計画であった。しかし計画を部分的に変更し、作成した実験プログラムを構築したサーバーに搭載する作業を優先して行った。実験プログラムをサーバーへ搭載する段階までは進んだが、部分的にうまく作動しないことや、使用するOSによって動作が異なるなど、いくつかの問題が生じたため、上述した計画の遂行に遅れが生じた。 現在は、これらの不具合を解消すべく、繰り返しプログラムの動作を確認し、修正を繰り返している。以上より、平成30年度に実行する予定であった、サーバーへの実装に早期に取り組むことができたが、平成29年度中に実現する計画であったヒトでの再現実験実施を遂行できていないため、進捗状況は「やや遅れている」という状態である。
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今後の研究の推進方策 |
(1)平成29年度に作成した全てのゲームプログラムをJavaScriptで書き直す。サーバーへ搭載した実験プログラムに関しては、現在までに確認されていた不具合をすべて修正するための確認作業を継続する。そして、(a)各個人のPC にインストールして実行、(b)サーバへのWEB ブラウザを通したアクセス、(c)i-OS やアンドロイド端末といったスマートフォン上のアプリとして配布、という3つの方式で実験を実施できるように実験環境を整備する。 (2)構築した実験環境で、動物での実験結果を再現できるかどうかを検証する。具体的には、最低でも5日間の継続的参加をもたらし、かつそこでのパフォーマンスが、報酬スケジュール下での代表的現象である「FI スキャロップ」と「FR強化後反応休止」を再現できていることを確認する。これらの現象を確認できた後、研究分担者それぞれが研究対象としてきた分野(「VR-VI 反応率差」「選択行動下の行動変動性」「反応復活」など)から新しい研究テーマを選定し、作成した実験プラットホーム上で再現できるかどうかを検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では、実験プログラムの作成にかかる人件費と、実験参加者に対する謝金として2,110,000円を計上している。しかし、実験プログラムが現在作成途中であり、謝金を必要とする実験の実施を十分に行う段階に達しなかった。これに加え、タブレット端末上での実験実施を予定しているが、どういったタブレットが本実験プログラムとうまく適合するか十分に吟味した上で購入する予定であった。この点についても実験プログラムの完成を優先しなければならず、予定よりも少ない購入数となった。以上が、次年度使用額が生じた理由である。次年度はまず実験プログラムを完成させた上で、タブレット端末を購入し、約100名程度の実験参加者を募り、当該助成金を使用していく計画である。
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