研究課題/領域番号 |
17K18714
|
研究機関 | 常葉大学 |
研究代表者 |
百瀬 容美子 常葉大学, 教育学部, 准教授 (20612724)
|
研究分担者 |
伊藤 宏 常葉大学, 教育学部, 教授 (20022296) [辞退]
|
研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
|
キーワード | 先天全盲 / 視覚障害 / イメージトレーニング / ブラインドサッカー / ブラインドパラスポーツ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,先天全盲選手向け運動イメージ生成評価基準を開発することであった.本評価基準が開発され活用されれば,先天全盲選手のイメージ生成スキルの向上に寄与し,それに随伴し動作スキルの発揮にもつながると予想された.平成30年度の研究実績は,主に次の二つである. 第一は,前年度までに原案作成した評価基準の信頼性と妥当性を確認したことである.先天性視覚障害を有するブラインドサッカー選手8名を対象に,信頼性については再テスト法による順位相関係数を算出した.その結果,全領域で1%水準の関連性が確認でき,本評価基準の4領域で高い信頼性が確認された.妥当性については専門家間で内容妥当性を検討した結果,この4領域20項目からなる本評価基準は,ブラインドサッカーの技術的および認知的な学習上の肝要な目標像であり,学習プロセスにおいて評価・チェックすべき内容が反映されているという見解で一致した.基準関連妥当性を検討した結果,本評価基準は既存の質問紙で測定されるイメージとは異なり,ブラインドサッカー攻撃場面に肝要な技術的スキルのイメージ想起の難易度を測定していることが明らかにされた. 第二は,本評価基準とブラインドサッカー技術スキルとの関連を確認したことである.先天性視覚障害を有するブラインドサッカー選手8名を対象に,ドリブルタイムとゴールシュートスキルとの順位相関係数を算出した.その結果,ドリブルスキルで指標となるボール操作スキルとドリブルスピードの両面が本評価基準を構成する主観イメージ得点に反映されていることが判明した.さらに,3mの近い距離ではなく6mの距離からのゴールシュートで得点奪取するためには俯瞰的なイメージが活用されているのではないかと推測された.この俯瞰的なイメージは練習や試合経験を積んでいくことで生成しやすくなることが考察された.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度には,ブラインドサッカーに焦点を当てた評価基準作成が概ね完了した.作成手続きを通して,本評価基準はブラインドサッカー選手に適用可能だと確認された. そして平成30年度後半から令和元年度前半にかけて,評価基準を活用した運動イメージ生成指導を実践し,実用性の確認を進めている.研究協力者は,特別支援盲学校に在籍する児童生徒である.具体的には,独立変数を運動イメージ生成指導とし,従属変数をイメージ生成スキル(本評価基準の項目得点など)と動作スキルとした.このようにして,この評価基準の科学性と実用性を検証しており,現在は追加実践データの収集とこれまでに得た結果の多面的分析を行っている.現時点では,運動イメージ生成指導によるイメージ生成スキルと動作スキルの向上に伴って本評価基準得点が上昇することを確認している.このように,本研究課題で計画した検討事項はほぼ完了に近い状況にある.
|
今後の研究の推進方策 |
今後,現在進行中の追加実践データを含めた全ての分析結果を総括し,本評価基準が視覚障害を持つ児童生徒の運動学習の促進に寄与することを示す. そして最終年度となる令和元年度には,開発された運動イメージ生成評価基準の体系化と成果公表,研究成果の評価を得る.本研究の成果は国内外を通して希少価値のあるアウトプットになると予想されるため,国内外で精力的に行う.具体的には,European College of Sport Science (ECSS),Association for Applied Sport Psychology,および,日本イメージ心理学会,日本スポーツ心理学会,視覚特別支援学校,ブラインドスポーツ指導現場である.研究成果の評価を得た上で,同学会が発行する学術雑誌へ論文投稿する予定である.
|