研究課題/領域番号 |
17K18724
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
荒川 知幸 京都大学, 数理解析研究所, 教授 (40377974)
|
研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
|
キーワード | 群の表現論 / 頂点作用素代数 |
研究実績の概要 |
リオデジャネイロで開催された国際数学者会議、大栗博司氏のハンブルグ賞受賞記念研究集会「Theoretical Physics Symposium 2018」、Simon Instituteで開催された「Vertex Algebras and Gauge Theory、」他9件の国際会議で招待講演を行い、5本の査読付き論文が出版された。また桑原俊郎氏、中筋麻貴氏とともに、研究集会「Algebraic Lie Theory and Representation Theory 2018」を開催し、多数の興味深い講演から知見を広めることができた。 研究面での実績は以下の通りである。 最近、物理学においてRastelli等によって4D/2D双対性が発見され、大きな注目を浴びている。より具体的には、N=2超対称性を持つ4次元の超共型場理論の不変量として頂点代数が構成され、その指標が4次元理論のSchur Indexに一致することが発見された。さらに驚くべきことに、4次元理論の幾何学的不変量であるHiggs枝が、対応する頂点代数の随伴多様体と一致することが期待されている(Beem-Rastelli予想)。さて、4次元の超共型場理論にはクラスS理論と呼ばれる広いクラスが存在する。クラスS理論に対応する頂点代数を数学的に厳密に構成し、Beem-Rastelli予想をクラスS理論に対して証明することが本研究課題の第一の目的であった。初年度にこれを達成したが、当該年度には結果を論文にまとめ、プレプリントとして提出した(arXiv:1804.01287 [math.RT])。また、Edward Frenkelとの共同研究により、量子幾何学的Langlands対応の証明のプログラムにおいて本質的な役割を果たす、W代数の表現の双対性を確立した(arXiv:1807.01536 [math.QA])。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題の第一の目的であった、「クラスS理論に対応する頂点代数を数学的に厳密に構成し、Beem-Rastelli予想をクラスS理論に対して証明する」ことに成功し、さらに量子幾何学的Langlands対応の証明のプログラムにおいて本質的な役割を果たすW代数の表現の双対性を確立することに成功したため。
|
今後の研究の推進方策 |
N=2超対称性を持つ4次元の超共型場理論には、Argyres-Douglas理論と呼ばれるクラスS理論とは異なる大きなクラスが存在することが知られている。我々はこれまでに、Argyres-Douglas理論とW代数の崩壊レベルの理論が密接に関係することを観察した。今年度はこの観察を推し進め、特異点理論の観点からW代数の崩壊レベルを研究し、Argyres-Douglas理論への応用を行う(Anne Moreauとの共同研究)。また。Argyres-Douglas理論のColoumb枝と、対応するW代数の表現圏との間に不思議な双対性があることも観察されている。これを受け、W代数の表現圏のなすテンソル圏を調べ、Argyres-Douglas理論との関係を調べる(Jethro van Ekerenとの共同研究)。
|