研究課題/領域番号 |
17K18726
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
落合 啓之 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 教授 (90214163)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | 特殊関数 / リー環 / 変数分離 / 超幾何関数 / 一般ライト関数 / 対称性 / 分数階微分 |
研究実績の概要 |
特殊関数論を他の分野との相互作用を意識しつつ展開することを探る挑戦的研究である。初年度である本年度は、まず、特殊関数として、Mittag-Leffler 関数やそれを拡張した一般ライト関数など、あまり馴染みのない関数の性質を調べた。特殊関数というと先行研究では超幾何関数やゼータ関数などがよく扱われているが、その範囲を超えていった場合にどのような性質が保たれ、どのような新しい現象が起こるのかをこれらの関数の族で検証していったものである。Uuganbayar(モンゴル国立大学) 並びに私の研究室の大学院生Dorjgotovと共同研究では、先行研究で得られている関係式を整理するとともに新しい関数関係式を与えることができ、それを論文として公表した。今後はこれらの関係式がなす代数構造があるかどうか、あるとしたら超幾何関数の昇降演算子のようなリー代数としての解釈を許すかどうかなどの発展が見込めるものである。 特殊関数の由来として、新たに分数階の偏微分方程式の対称性の決定と、その対称性による変数分離の機構を考察した。群作用による多様体の分解だけでなく、独立変数の選択が分数階の微分の場合には、ドラスティックな変更をもたらすことに気づいたのが我々の研究の成果であり、この成果の副産物として、解の今まで知られていなかった表示を与えることに成功した。連立系に対する基礎方程式(係数関数に対する拘束条件)も新しく与えている。これは多数の未知関数を含む非線形の連立系であるが、帰納的構造を見出すことで幾つかの場合は係数関数と対称性のリー環を決定できている。このアルゴリズムが上手くいくカラクリを解明することは今後の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
超幾何関数やゼータ関数を超えた関数のクラスとしてどのようなものを扱うべきかが計画段階からの最初の挑戦であったが、一般ライト関数がその有力な候補となることがわかり、有効な研究対象として絞れたことは幸運でもあった。広い範囲を探査したことの帰結でもある。このあたりの課題は、やるべきことがたくさん残されているので、今後も順調に研究が推移すると期待できるものである。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究成果を踏まえて、引き続き課題に取り組んでいく。これまでの計画に加えて、特に、今年度の成果を踏まえた新しい挑戦として、上記実績に記載したアルゴリズム(プロセス)を、よりスキームとして理解するという大きな課題も、次年度1年で解決できるかどうかはわからないものの、解決への糸口は是非ともつかみたい。確保したプロジェクトスペースでは研究討論やセミナーなどを行い、研究資料の共有化(講義録など)にも努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
外国から招聘する予定の外国人が妊娠のため来日できなくなったことなどで今年度の支出が減った。次年度に別の研究者を招聘する資金に充てることと、翌年度請求分と合わせて、ポスドクを研究補助に使う資金にする計画である。
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