研究課題/領域番号 |
17K18727
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
中岡 宏行 鹿児島大学, 理工学域理学系, 准教授 (90568677)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | n-角圏 / n-完全圏 / 三角圏 / 完全圏 |
研究実績の概要 |
本研究は、代数分野に現れるホモロジカルな圏論として、ホモロジー代数の重要な舞台である完全圏・三角圏とその周辺の一般論を発展させることを目的としている。中心的課題としては、完全圏と三角圏を統一する圏のクラスでのホモロジー代数理論の展開を挙げている。手法としては、以前に導入したextriangulated categoryという概念を発展させることを想定している。 特に、環の表現論において近年現れた三角圏の高次数化としてのn(+2)-角圏、ならびに完全圏・アーベル圏の高次数化としてのn-完全圏・n-アーベル圏を統一的に扱う枠組みを与えることも目標の一つである。 29年度は、実際にn-完全圏とn+2-角圏を統一する圏のクラスとしてn-exangulated categoryという概念を定義し、その基本的な性質を調べた。上述のextriangulated categoryは完全圏における短完全列や三角圏における完全三角形といった従来のものに代わりExt1関手に相当する構造を本体に据えて定義されていたが、高次数化であるn-exangulated categoryも同様にn次のExt-関手にあたる構造を用いて定義した。この結果はプレプリントサーバーarXivに投稿済みである。このn-exangulated categoryは、可逆なシフト関手を持つ場合にはn+2-角圏に他ならず、また、inflationとdeflationおよびn-exangleのクラスが適切な条件を満たす場合にはn-完全圏を与え、一方でn=1の場合には上述のextriangulated categoryに一致するため、想定していたとおりの性質を持つ圏のクラスである。さらに同プレプリントに於いて、適切な条件を満たすextriangulated categoryのn-クラスター傾部分圏が自然にn-exangulated categoryの構造を持つことを示した。また、n-exangulated categoryにおけるrelative theoryを考察し、n-exangulated categoryのクラスがrelative theoryで閉じていることも示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
n-完全圏・n-アーベル圏を統一的に扱う枠組みを与えることは、計画当初は30年度の目標であったため、29年度に既にその定義が得られたという点では、想定よりも早く研究が進展しているといえる。また、目標の一つとして29年度に予定していたextriangulated categoryの相対ホモロジー代数についても、relative theoryを一般のnで考察できたことを考えると、おおむね順調に進展しているといえる。 一方で、n=1の場合すなわちextriangulated categoryにおいてAuslander-Reiten理論を考察するという目標については、現在研究を行っているところであり、30年度以降に達成できればと考えている。以上のとおり、29年度の内容と30年度の目標と研究実施状況に一部入れ替わりが生じたものの、一般のnで目標を達成しつつあることを踏まえると、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
n-完全圏とn+2-角圏を統一する圏のクラスとしてn-exangulated categoryの定義が得られたことから、今後は関連する現象を一般のnで考察する基盤ができているといえる。このため、構成が可能なものについては、一般のnでの可能性も視野に入れたい。一方で、n-完全圏やn-角圏での現象は少なくとも完全圏や三角圏と比べるとまだまだ未知の部分が多いこと、また、extriangulated categoryに比べて高次数化であるn-exangulated categoryの定義も複雑になっていることを鑑みると、まずはn=1の場合にextriangulated categoryを用いて関連する現象の詳細な記述を検討することが肝要であると考えている。今後、extriangulated categoryにおけるrelative theory、Auslander-Reiten理論、局所化の可能性などについて詳しく検討していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では研究内容の性質上、大型の実験機器等は不要であり、直接経費の申請内訳の殆どは旅費が占めている。29年度は、所属機関において選挙等で選出された委員としての運営業務が重なってしまい、中長期の出張が困難であった。このため、29年度中に早急に必要となる研究発表および打合せについては、短めの日程でかつ一度の出張で二か国を渡るように組み、30年度以降への変更が可能なものについては予定を後ろにずらすことで柔軟に対応することとした。
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