研究課題/領域番号 |
17K18728
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
村上 順 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (90157751)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2021-03-31
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キーワード | 結び目 / SL(2) 表現 / 基本群 / ホップ代数 / 量子化 |
研究実績の概要 |
この研究では,結び目補空間の基本群の線形表現を、線形群上の関数空間がなすホップ代数の視点から見直すことで,線形表現の量子化にあたるものの構成を目指した.量子化を得るためには線形群上の関数空間がなすホップ代数の量子化を考える必要があるが,これに対しては,S. Majid により構成された組紐型の量子群を用いるというのが主たるアイデアである. 最初の成果として,組紐型のホップ代数から組紐群の表現が得られることがわかった.ホップ代数については知られている結果だが,組紐型のホップ代数でも同じようにして組紐群の表現が得られることが示せ,この表現をもとに,結び目にのみよる数学的なオブジェクトの構成を目指した.線形表現の場合,基本群からその線形群への準同型写像全体のなす空間の同型類が,結び目によって一通りに決まり,結び目のこの線形群に対応する表現空間と呼ばれている.この構成をホップ代数の視点から見直し,組紐型のホップ代数に拡張するのであるが.このとき,組紐型のホップ代数が「組紐型の交換関係」を満たせば、対応する表現空間の同型類が結び目から一通りに決まることを示した. 古典型の線形群に対しては対応する組紐型のホップ代数があり,これらはみな組紐型の交換関係を満たすので,結び目群の古典型の線形群への線形表現から,対応する組紐型のホップ代数の表現空間が構成できることがわかり,これを表現の量子化と呼んでいる. このようにして組紐型のホップ代数から構成された表現空間は,非可換な代数的なスキームと呼ばれるものにになるが,組紐型の交換関係があることにより,非可換スキームとしてこれまでにない特徴を持つことがわかり,非可換代数幾何に対する新たな興味深い例の族を与えることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
表現空間から指標多様体が構成されるが,この指標多様体にあたるものの量子化がまだ構成できていない。
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今後の研究の推進方策 |
基本群の通常の表現に対しては,表現空間から指標多様体が構成されるであるが,この指標多様体にあたるものの量子化がまだ構成できていない。そこで,この指標多様体の量子化の構成を目指すとともに,結び目の A-多項式との関係や他の普遍流王との関係についても明らかにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
共同研究者が大学を移ることになって共同研究が進められない期間が生じたため,次年度に研究を進めることにした. 共同研究者 Rolond van der Veen 氏の招聘旅費として使用する予定である.
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