今年度も、すべての出張を取りやめ、研究打合せはパソコン等を用いて遠隔通信で行った。 多変数フーリエ級数の収束問題について、研究代表者と倉坪茂彦、大坪和弥が、原点を中心とする球の定義関数のフーリエ級数に対して用いた方法、すなわち、フーリエ級数を Gibbs (Gibbs-Wilbraham) 現象、Pinsky 現象、倉坪現象の3つに分解する方法を用いて、研究を進めた。昨年度までの研究により、原点からの距離にのみ依存する関数で、しかも、Taylarが用いた2次元波動方程式の基本解を高次元に一般化した関数に関して、その球形部分和の各点における収束・発散および未解決部分を詳細に記述することができ、さらに、多変数フーリエ級数の収束問題の未解決部分と格子点問題の未解決部分との同値性について証明が完成していたが、今年度はこの研究成果を62ページの論文にまとめて出版した。 格子点問題は、解析的整数論の難問であり、そのひとつとして、「Hardy 予想」が有名である。「Hardy 予想」とは、円の面積と格子点の個数との誤差に関するガウスの円問題についての予想であり、100年来の未解決問題である。このガウスの円問題について、藤間昌一が中心となり、東京大学で新しく導入されたスーパーコンピュータ Wisteria/BDEC-01 を用いて数値実験を行った。東京大学のスーパーコンピュータ Oakforest-PACS および Oakbridge-CX や「富岳」を用いて得ていた結果を上回る結果を得た。「Hardy 予想」が正しいことが予想できる結果となった。
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